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アクション映画の原点に立ち戻ることのできる本作『ジョン・ウィック』では、冒頭20分で可愛い耳の垂れたビーグルが殺される。その後も衝撃的な出来事は起こるが、どれも観客にそこまで痛みを感じさせるものではない。そして、この犬や、飼い主よりも、純真な存在は誰1人として登場しない。主人公は妻に先立たれた元殺し屋のジョン・ウィック(キアヌ・リーブスが興奮状態で「うわ!」という昔ながらの台詞を聞かせてくれる)。ある日、ロシアンマフィアによる残忍な住居侵入強盗に遭い、癌と闘病していた愛妻からの最後の贈り物だった子犬が小さな悲しい鳴声を残して殺されてしまう。彼は記録的な速さで立ち直るが、その手には拳銃、ライフル、特殊な金貨が握られていた。そしてTVドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で不運な役を演じたアルフィー・アレン(永遠にいじめられる対象になる運命だ)は、皆が恐れる非情な伝説の殺し屋によって自分が追われていることに気付くのだ。
本作について多く語らずにおこう。しっかりと設計され、実際に観客が支持できる「ガン フー(銃とカンフー)」シークエンスと、残忍な殺人によって恩恵があるアクション映画のようだが、復讐を描くストーリーはとても間抜けていた。観客はどちらか一方を選ばなければならない必要はないはずだ。共同監督や熟練したスタントのエキスパートがインパクトに対する眼識を備えながら完成させた本作には、スリルに満ちながら優雅さがちりばめられている。劇中でキアヌ・リーブスは犯罪者たちを受け入れるお洒落なブティックホテルを定宿にするが、それがデレク・コルスタッドによる一般的な脚本において唯一ウィットを感じる部分だ。過激な観客が逃避を求めて鑑賞するには十分だが、詩的要素を期待しながら鑑賞してはいけない作品である。
2015年10月16日(金)TOHOシネマズ新宿ほか 全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン R15+
Motion Picture Artwork © 2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights
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翻訳:小山留美