スティーヴン・ソダーバーグが4年ぶりにメガホンをとった、犯罪コメディ『ローガン・ラッキー』。本作には、映画『オーシャンズ11』の華やかで即興的な雰囲気が漂い、『マジック・マイク』の南部風ユーモアが散りばめられている。
劇中に登場するローガン兄弟は、ことごとく運が悪い。離婚して幼い娘を溺愛するジミー(チャニング・テイタム)は建設の仕事を失ったばかりで、バーテンダーのクライド(アダム・ドライバー)はイラク戦争で左腕を失っている。彼らは、ダニエル・クレイグが演じる(ジェームズ・ボンド役とは対照的な)恐ろしく魅力的な服役中の囚人ジョーら共謀者たちを寄せ集め、アメリカ最大のモーターカーイベント『NASCARレース』の会場から何百万ドルもの大金を盗み出すことで、不運な家族の呪縛を取り払い、一発逆転を狙う。
レース会場で便座を投げるシーンはさておき、ソダーバーグは地方出身者をからかうようには描いていない。本作は映画『ファーゴ』のようにトリッキーに描かれているのだ。心優しい人間と残酷な人間に境界を引き、観客は彼の惜しみないエネルギーに身を任せることになる。あまりにも稀少な負け犬コメディのような作品に仕上がっていた。