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ドラァグクイーンであることは政治的なこと
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > #10 ドラァグクイーンであることは政治的なこと 新宿二丁目にあるゲイバー「イーグル トウキョウ ブルー」に、3人のドラァグクイーンが集まった。座談会が行われたのは、「プライドマンス」が始まる1カ月前の2023年5月某日。 プライドマンスは、ニューヨークで起こった「ストーンウォールの反乱(*1)」がきっかけとなって始まった。LGBTQ+コミュニティーを示すための月間として知られ、日本でもキャンペーンの打ち出しやイベントの開催、企業によるレインボーグッズの販売など、クィア(*2)コミュニティーの一大イベントとなる期間だ。 しかし、当事者の声を届ける企画「QUEER VOICE」でも明らかになったことだが、「ハッピープライド!」と声を大にできない現状も同時にある。同性婚やLGBT+差別禁止法が認められないことが、クィアの生活に影響を及ぼしていることは言うまでもない。 今回、ドラァグクイーンとして活動するLabianna Joro(ラビアナ・ジョロー)、Moche Le Cendrillon(モチェ)、Vera Strondh(ヴェラ・ストロンジュ)の3人が集まり、単刀直入に意見を交わした。その中でも、「個人的なことは政治的なこと」とあるように、「ドラァグクイーンであることは政治的なこと」という言葉が印象的だった。ドラァグクイーンとしての活動は、政治とどう関係しているのか? さらに、プライドマンスを通して見える今の社会についても掘り下げる。 *1 1969年6月28日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で起きた、警察によるLGBTQ+当事者らの迫害に真っ向から立ち向かう抵抗運動のこと。ゲイ解放運動が拡大するきっかけとなった、LGBTQ+の歴史における象徴的な出来事。 *2 「クィア」とは、19世紀の英語圏でゲイを侮辱的に表現する「奇妙な」「変態」といった意味を持つ。当事者が自らをクィアと名乗ることで、開き直った姿勢を示し、ポジティブな言葉として変換された歴史がある。本記事では、クィアコミュニティーにおける歴史的背景を踏まえた上で、クィアを単なる性的マイノリティーではなく「連帯」という意味合いを含んで示している。また、性的マイノリティーという属性を分かりやすく示すために「LGBTQ+」の単語を使用する場合もある。 関連記事『東京で人気のドラァグクイーンに会おう』『「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観』『ドラァグクイーンとして体毛を生やす理由「男・女」らしさで遊んで』

「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > 「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観 ドラァグクイーンは、単に派手で独創的なだけではない存在だ。豪華絢爛(けんらん)なエンターテイメントが繰り広げられる裏には、公では語られないようなさまざまなドラマがある。 ライター、ダンサーとして活動する筆者の、高校時代からの友人であるVera Strondh(ヴェラ・ストロンジュ)は、さまざまなシーンで活躍するドラァグクイーン。「一緒に踊らない?」という彼女の一言から新宿二丁目のイベントに出演した際、Veraの「ドラァグマザー」であるVictoria Strondh(ヴィクトリア・ストロンジュ)と「ドラァグファザー」のMarcel Onodera(マルセル・オノデラ)に出会った。 3人は「Strondh」(ストロンジュ=マザーのVictoriaがもともと使用していたファミリーネーム)という名前のもと、2018年から活動している。日本ではあまり馴染みはないが、ドラァグシーンでは「ドラァグファミリー」と呼ばれる家族を構築し、母親が娘にドラァグの世界での振る舞いを教えることもある。 まだまだ謎が深いドラァグファミリーの実態を、インタビューを通して明らかにしていく。 関連記事『東京で人気のドラァグクイーンに会おう』『ドラァグクイーンとして体毛を生やす理由「男・女」らしさで遊んで』

東京、クィアのための音楽イベント
タイムアウト東京> LGBTQ+> 東京、クィアのための音楽イベント 音であふれる東京のクラブシーン。平日から週末まで、日夜たくさんのパーティーが開催されているが、さまざまなジェンダーやセクシュアリティーに開かれたセーフスペースとしてのイベントはまだ少ない。本記事ではクィアが楽しめるクラブやレイヴなどの音楽イベントを紹介。安心して踊りに出かけよう。 関連記事『プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選』『2023年、クラブの安全性はどう変化するか?』

「人生の全ての瞬間がクィアです」私たちの本音―QUEER VOICE後編
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > #9 QUEER VOICE後編 プライドウィークが始まり、東京では多くのLGBTQ+イベントが開催される。クィアたちは何を思って、普段過ごしているのだろうか。プライドウィークが終わっても、クィアの存在は共にあり続ける。 前編では、17歳から57歳までと幅広い41人のアンケート回答を掲載。後編では、クィアシーンで活躍する6人に以下10の質問を任意で回答してもらい、抜粋して紹介する。 ・自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?・自分のジェンダー/セクシュアリティーに関して、違和感を抱いたことは?・カミングアウトはした/していない?・クィアならではの経験をしたことは?・クィアが安心して過ごせる場所は?・今年の東京レインボープライドには参加する?・東京レインボープライドについてどう思う?・「ハッピープライド」という言葉に関して、どのように感じている?・東京レインボープライドが始まった約10年前と比べて、今のLGBTQ+シーンはどう変化した?・好きなクィアコンテンツを教えて クィアのリアルな声を紹介する「QUEER VOICE」。一人一人が持つ、それぞれのストーリーを届けたい。 関連記事『「クィアならではの経験は?」「レインボープライド行く?」QUEER VOICE前編』『SEX:私の場合』

「クィアならではの経験は?」「レインボープライド行く?」QUEER VOICE前編
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > #9 QUEER VOICE前編 We are here. We are Queer!(私たちはここにいる、私たちはクィアだ) 2023年4月22日(土)〜5月7日(日)はプライドウィークの期間。「東京レインボープライド」の開催があり、クィア(*1)やLGBTQ+コミュニティーを支援する企業、アライ(ally=仲間や同盟を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)の姿を多く目にするだろう。 だが、クィアが存在するのはプライドウィークの2週間だけではない。少数派とされているLGBTQ+は、職場の同僚や友達、家族の中にも多くいる。本記事では、「いない」のではなく「いないこととされている」クィアたちの本音を「QUEER VOICE」 として発表。全国の当事者を対象にアンケートを実施し、17歳から57歳までと幅広い年齢層の41人からの回答を受けた。 前編ではアンケート結果を発表。後編では、日本のクィアシーンで活動する6人の当事者の回答を紹介する。 ・自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?・自分のジェンダー/セクシュアリティーに関して、違和感を抱いたことは?・カミングアウトはした/していない?・クィアならではの経験をしたことは?・クィアが安心して過ごせる場所は?・今年の東京レインボープライドには参加する?・東京レインボープライドについてどう思う?・「ハッピープライド」という言葉に関して、どのように感じている?・東京レインボープライドが始まった約10年前と比べて、今のLGBTQ+シーンはどう変化した?・好きなクィアコンテンツを教えて *1「クィア」とは、19世紀の英語圏でゲイを侮辱的に表現する「奇妙な」「変態」といった意味を持つ。当事者が自らをクィアと名乗ることで、開き直った姿勢を示し、ポジティブな言葉として変換された歴史がある。 本記事では、クィアコミュニティーにおける歴史的背景を踏まえた上で、クィアを単なる性的マイノリティーではなく「連帯」という意味合いを含んで示している。また、性的マイノリティーという属性を分かりやすく示すために「LGBTQ+」の単語を使用する場合もある。 関連記事『SEX:私の場合』『「人生の全ての瞬間がクィアです」私たちの本音―QUEER VOICE後編』

プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選 国内最大級、LGBTQ+の祭典「東京レインボープライド」が今年も開催。「プライドウィーク」と呼ばれる2023年4月22日(土)から5月7日(日)には、さまざまなLGBTQ+コミュニティーから誕生したクラブパーティーが開かれる。 本記事では当事者はもちろん、アライ(ally=「仲間」や「同盟」を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)の人たちも一緒に楽しめる、都内のクールなクィアパーティーを紹介する。 関連記事『日本最大級の女性限定イベント「TIPSY」が3年ぶりに開催』『祝30周年、伝説のゲイミックスパーティー「the Ring」が5年ぶりに開催』

東京、LGBTQ+パーティー
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > 東京、LGBTQ+パーティー 熱気を帯びるLGBTQ+コミュニティーのパーティーシーン。ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィアなど、あらゆるセクシュアリティー・ジェンダーの人たちが足を鳴らして、自分たちの存在を光らせている。 酒を飲んで交流したい人、とにかく踊りたい人、セクシーなゴーゴーダンサーにチップを渡したい人、厚化粧にきらびやかな衣装を身にまとったドラァグクイーンのショーを堪能したい人など、それぞれの楽しみ方ができる。一歩足を踏み入れるとそこにいる皆が主人公であり、オリジナルの世界観が交差するのだ。 誰もが安心して参加し、ホットなナイトライフを送れる東京のLGBTQ+イベントを紹介する。 関連記事『プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選』『東京、LGBTQ+フレンドリースポット11選』

コース料理に例えるセックスー「テーブルマナー」のコンドーム装着を怠るな
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > コース料理に例えるセックスー「テーブルマナー」のコンドーム装着を怠るな 「コンドームを使わない方が気持ちいい」「膣外射精ならナシでも問題ない」など、コンドームの装着を避けるゴム嫌いは珍しくない。さらに、コンドームは避妊具として広く知られているものの、性感染症を防ぐためのものという認知は薄い。 性についての正しい知識は自分自身を守るために不可欠であり、セックスを安心して楽しむための手段でもあるのに、なぜ広く浸透していないのだろうか。考えられるいくつかの理由として、学校での性教育やメディアのあり方が挙げられるとコンドームソムリエAiは語る。 現役の保健室の先生であり、国内にある約130種以上のコンドームに詳しく、さまざまな情報を発信しているコンドームソムリエAi。コンドームを触って嗅いで引っ張れる「コンドーム試触会」を開催したり、メディアでの発信を積極的に行ったりなど、性感染症予防や性生活の向上を目指している。 国内のコンドームを知り尽くす彼女に、日本の性の課題について養護教諭の立場からも話を聞いた。 関連記事『セックスを豊かにする最新コンドーム5選』『インタビュー:コンドームソムリエAi』

過激なカウンターカルチャーを追う男、ケロッピー前田が語る身体改造の魅力
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > 過激なカウンターカルチャーを追い続ける男、ケロッピー前田が語る身体改造の魅力 世界には過激なカウンターカルチャーが存在する。体にフックを刺してつり上げるボディサスペンション、身体の一部を切断するアンピュテーション、マイクロチップを体内に埋め込むボディハッキング……、今回紹介するのは「身体改造」だ。身体に痛みをともなう行為には、儀式としての背景もあるのだとか。 筆者は、そんな長い歴史を持つ身体改造と、人間の奥底に眠る性(さが)の関係性に興味を持った。身体改造を追い続け、最も過激な身体改造本「モドゥコン・ブック」の出版を手がけたジャーナリストのケロッピー前田が、身体と精神について語る。 関連記事『SEX:私の場合』『ドラァグクイーンとして体毛を生やす理由「男・女」らしさで遊んで』

日本最大級の女性限定イベント「TIPSY」が3年ぶりに開催
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > 日本最大級の女性限定イベント「TIPSY」が3年ぶりに開催 華やかな衣装に身を包む女性ダンサー、彼女たちにチップを渡し、ミラーボールの下で踊る女性たち……こんなにも豪華絢爛(けんらん)な世界があるのか。レズビアン、バイセクシュアル女性を主軸とした日本最大級の女性限定イベント「TIPSY(ティプシー)」が誕生したのは、今から10年前。女性限定にもかかわらず、一晩の動員数が1500人を超えるほどの成功を収めていた。 そんなTIPSYが活動を休止したことは、セクシュアルマイノリティーの女性たちを驚かせる知らせであった。主催者の原田悠宇は、コロナ禍、誹謗(ひぼう)中傷、療養生活など、さまざまな苦悩の時期を経て、3年ぶりにイベント開催を決意。2022年11月26日(土)、「自らとTIPSYの再生」を意味する「TIPSY Re:birth」が始動、あの伝説のパーティーが戻ってきた。 関連記事『東京、LGBTQ+パーティー』『東京、LGBTQ+フレンドリースポット11選』

「踊りとは空っぽになること」大駱駝艦・田村一行が考える舞踏とは
タイムアウト東京> カルチャー> 「踊りとは空っぽになること」大駱駝艦・田村一行が考える舞踏とは 2022年10月21日(金)〜23日(日)、現存する最古の舞踏カンパニー「大駱駝艦」(だいらくだかん)が、「シアタートラム」で公演「舞踏 天狗藝術論」を開催。振鋳(振付)・演出・美術・鋳態(出演)を担当するのは、大駱駝艦主宰の麿赤兒に師事する田村一行だ。 関連記事「インタビュー:森山未來」「インタビュー:佐東利穂子」

「全ての人が性の当事者」クィアが問われる質問をシスヘテロが答える(後編)
タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > 「全ての人が性の当事者」クィアが問われる質問をシスヘテロが答える(後編) 「性」とは、性別・性的指向・性自認を表すと同時に、人間の自然な側面を表す「さが」としての意味を持つ。性の在り方はLGBTQ+だけでなく、シスヘテロを含む全ての人が向き合う話題であり、当事者なのだ。 「シスヘテロ」とは、「シスジェンダー」(生まれた時に割り当てられた性別と自認する性が一致する人)と「ヘテロセクシュアル」(異性愛者)を合わせた言葉であり、世の中ではいわゆるマジョリティー側を指す。 一方で、シスヘテロではないLGBTQ+やクィアはマイノリティーとされている。 本記事は、LGBTQ+やクィアが日々問われる質問をシスヘテロにインタビューし、性の当事者としてともに考えていくための新企画だ。前編では、ためらいながら言葉を探す人、自信を持って答える人、回答が見つからない人など、さまざまな面持ちで答える様子が印象的であった。 今回、企画に参加してくれたシスヘテロ当事者は、男性29%、女性71%と、女性の割合が多い結果となった。年齢・職業・性別に偏りがないよう考慮した上で、6人の当事者に取材を実施している。 回答者の6人には、以下5つの共通の質問を用意した。 シスヘテロだと思ったきっかけは? カミングアウトはしましたか? シスヘテロとして生きづらさを感じたことはありますか? シスヘテロとして感じられる幸せはありますか? 今後どのような社会を願っていますか? 後編では、3人の当事者の回答を紹介する。セクシュアリティーについて、今一度自分に問いただしてみると、新たな発見があるかもしれない。 関連記事『「なぜ異性が好きなの?」シスヘテロ当事者にインタビュー(前編)』『SEX:私の場合』
News (17)

女性の体をカッコ良く、なりたい自分になるパーソナルジム「トレセンド」
男性には体形を逆三角形にするトレーニング、女性にはバストアップやヒップアップを中心とするトレーニングが提供されるなど、フィットネスやボディーにおける性別の固定観念は根強い。そんな体の性別にとらわれず、なりたい体になるためのパーソナルジム「トレセンド(TREACEND)」が、2023年6月5日(月)にオープン。美容師をしながら同性カップルの日常を発信するKAHOAIRIが、新たにボディーの領域で人々のトータルサポートを行うために始めた。 画像提供:TREACEND パーソナルトレーナーは、過去に店舗責任者としてパーソナルトレーニングジムに勤めていたAKIRAが担当。自身の体は女性だが、「なりたい体」は男性のような体であることから、「女性の体でも、トレーニング次第では男性のような体に近づけられるのではないか」という疑問を抱き、かっこいい体になるためのトレーニングを研究したという。 トレセンドでは、女性の体を男性らしくしたい人はもちろん、FTM(Female To Male)、FTX(Female To X-gender)当事者、男装をする人、ボーイッシュな人、なりたい体がある人など、セクシュアリティーや性別を限定せず、さまざまな人をサポートする。 Photo: Photo: Fumika Ishigaki AKIRAは、「女性の特徴が出ている部分を減らしたい」「男性らしい体に近づけたい」といった人に対して、骨盤の形を見直してウェーブのあるラインを改善するため、尻の筋肉を締めるように鍛えるトレーニングを提案。筋肉が発達するにつれて骨を引っ張る力を利用し、膝のねじれを改善するとのこと。そうすることにより、体のウェーブだけでなく、O脚、内股、腰幅の広い印象、反り腰など、一般的に女性らしいとされる体の特徴を薄くできると語る。 世の中には「男性は胸板を厚くするべき」「女性はしなやかな体を作るべき」といった固定観念がいまだに存在し、性別欄を記入しただけでバストアップやヒップアップといった種目を提案される場面は多い。そのことから、「くびれはつけたくないんです」「胸はできるだけ目立たなくさせたいんです」と伝えられないお客さんもいることを指摘。 トレセンドは、完全個室のパーソナルジムとして、周りの目を気にすることなく、それぞれが持つ「かっこいい」の具現化をサポートする。一人でのトレーニングはもちろん、友人同士やカップルでの来店も歓迎だ。 関連記事 『トレセンド』 『東京、セクマイのライフサポートスポット』 『Photo of the Day - 東京レインボープライド 2023』 『東京、クィアのための音楽イベント』 『六本木アートナイトが4年ぶりにオールナイトで開催』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

ラテンアメリカにおける婚姻平等、同性婚の法制化への道を考えるイベントをレポート
たくさんのサボテンが植えられた「メキシコ大使館」の中庭を通り、イベントが開催される建物に入ると、目の前にメキシコ、ブラジル、アルゼンチン、日本の国旗が並んでいた。2023年5月8日、ラテンアメリカにおける婚姻平等と同性婚の法制化について考えるイベント「ラテンアメリカと日本『婚姻平等 同性婚の法制化への道』」が開催された。 メルバ・プリーア(Photo: Keisuke Tanigawa) ラテンアメリカでは、シビルユニオン(*)やパートナーシップ制度の導入に続き、2009年にはメキシコシティが初の同性婚に関する法律を制定。アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、チリ、エクアドル、ウルグアイなどでも、婚姻の平等やLGBTQ+の権利が地方法や国家法に明記され、LGBTQ+コミュニティーの権利確立に向けた動きが見られている。 * 結婚に似た「法的に承認されたパートナーシップ関係」のことを指す 課題が存在する中で各国が前進し続けているのはなぜか。アルゼンチン、ブラジル、メキシコ各国の専門家と、日本のLGBTQ+団体の代表者が対談した。 オタヴィオ・ガルシア(Photo: Keisuke Tanigawa) イベントは、 駐日メキシコ大使のメルバ・プリーア、衆議院議員でLGBT議連会長の岩屋毅、駐日ブラジル大使のオタヴィオ・ガルシア、駐日アルゼンチン臨時代理大使のセサル・ロドルフォ・カンポイによる歓迎の言葉により開幕。今回のテーマでもある「ラテンアメリカにおける婚姻平等」についてトークを繰り広げるに当たり、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン各国の事例が紹介された。 畑惠子(Photo: Keisuke Tanigawa) 初めに登壇した早稲田大学名誉教授の畑惠子は、ラテンアメリカ諸国20カ国中9カ国で同性婚が認められていると話す一方、11カ国では認められていないことから「二極化」を指摘。その背景には、日本にも見られる男性優位主義や伝統的な家族観を重視している風潮があるという。 Photo: Keisuke Tanigawa Photo: Keisuke Tanigawa とはいえ、メキシコシティでは13年前の2010年に同性婚が法制化し、「性的マイノリティー」を「ジェンダー・性の多様性」とする表現を使うなど、多様性の一つとしてLGBTQ+コミュニティーを捉える意識も広がっていると語った。 近田亮平(Photo: Keisuke Tanigawa) 時代とともに社会全体の意識も変化していくため、その変化に合わせて法律も改正しなければならない。日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所・主任研究員の近田亮平は、ブラジルではかつて離婚が禁止されていたものの、基本的人権としての婚姻やブラジル独特の家族法論が軸となり、司法の積極的な役割により同性間の婚姻が認められたと説明する。 また、2018年に登録された同性婚は9520件で、前年比62%の増加を見せた。登録数が著しく増加したことの背景として、「息子が同性愛者なら事故で死んだ方がましだ」と差別的発言をしたことで知られるジャイール・ボルソナーロが大統領選で当選したことをきっかけに、カップルとしての権利を奪われることを恐れた同性カップルが駆け込み結婚をしたようだ。 このように、ブラジルのLGBTQ+コミュニティーを巡る問題は、寛容性と排他性が混在し、衝突していることが分かる。 渡部奈々(Photo: Keisuke Tanigawa) LGBTQ+フレンドリーの国(LGBTQ

日常に潜む違和感、ステレオタイプの「男らしさ」問うアート展が新宿で開催
「デートでは男性がおごるべき」「男性は仕事で業績を残して、女性は家庭を守らなければならない」など、世の中にはジェンダーステレオタイプが根強く残っている。人々が「男らしさ」「女らしさ」を習得することは当たり前とされ、それに違和感を抱いたとしても見過ごされがちだ。インディペンデントマガジンの「IWAKAN Magazine」は、そんな日常に潜む違和感に目を向け、疑問を投げかける。 「IWAKAN Magazine 6th EXHIBITION −男性制−」展 フライヤー 2023年5月12日(金)から5月28日(日)まで、「アパートメントホテル新宿」の「gallery -1」で男性性をテーマとして扱う「IWAKAN Magazine 6th EXHIBITION 男性制」展が開催。5月10日発売の特集号「IWAKAN Volume 06 特集 −男性制−」に収録されたアートワークや、会場でしか見ることのできない映像作品などが展示される。 ©︎Jacques Merle「Cute Apocalypse」 参加アーティストは、パリを拠点に活動するビジュアルアーティストのJacques Merle、主にパフォーマンスと写真を軸にして制作を行っている寺田健人、自分の身体を展示する形式「いる派」を標榜する小寺創太、手紙や岩絵具を使ってメンタルヘルスやLGBTQ+に対する差別など現代社会に関連する問題を記録するNelson Horなど、それぞれの表現でジェンダーについて考えるきっかけを与える。 ©︎小寺創太「tyokyo in tokyo 渋谷」(2022年)(Photo:藤江龍之介) トキシックマスキュリニティー(Toxic Masculinity=有害な男らしさ)という言葉があるように、社会的な期待に従って男性らしく振る舞うことは、実は男性の生きづらさにつながり、男性の自殺率を上げる要因にもなると考えられている。 ©︎Nelson Hor「家族の絆を」 ©︎寺田健人「想像上の妻と娘にケーキを買って帰る」 IWAKAN Magazine編集部は、そんな暴力的で支配的な規範を固定化するようなさびついた「男らしさ」や、その規範に当てはまらなければ「女らしさ」と片付けられることの粗雑さ、家父長制に参加させられているために抑圧されている画一的な男性性を問題として捉え、自らの男性性について考える場を提供するべく、展示の開催に至ったと語る。 固定化された概念に一度目を向け、新たな男性性を探求してみては。 関連記事 『IWAKAN Magazine 6th EXHIBITION 男性制』 『イスラエルの奇才振付家、インバル・ピントが10年ぶりの来日公演』 『「人生の全ての瞬間がクィアです」私たちの本音―QUEER VOICE後編』 『恋愛・生殖の有無に関係ない愛を描く映画「何をそんなに慎ましく」』 『プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

イスラエルの奇才振付家、インバル・ピントが10年ぶりの来日公演
イスラエルを拠点とし、世界中で活動するインバル・ピントは、1人で演出、振付、美術を担当する多才なアーティストだ。彼女の想像力はコロナ禍のロックダウン中でもとどまることを知らず、日本の俳優・ダンサーの森山未來と映像作品「OUTSIDE」の共同制作を行うなど、常に手を動かし続けていた。 ©Edouard Serra 来たる2023年5月19日(金)〜5月21日(日)、ロックダウン中の自室で長年温めてきた珠玉のデュオ作品「リビングルーム」が日本で上演。「世田谷パブリックシアター」での公演は、実に10年ぶりとなる。 リビングルームの舞台は、インバル・ピント自身がデザインを手がけたオリジナルの壁紙に囲まれ、どこかノスタルジックで近未来な不思議な空間が広がる。羽のように軽やかで繊細なダンスに魅了される、胸がキュンとなる特別なステージが開幕する。 出演は、長年創作を共にしているダンサーのモラン・ミュラーと、インバル・ピントの処女作にも出演し、近年ヨーロッパを拠点に活躍してきたダンサー・振付家のイタマール・セルッシ。インバル・ピントの独特の世界観の中で驚異的な2人のダンサーのセッションが展開されるリビングルーム。会場に足を運び、新しい現実を目にしよう。 関連記事 『インバル・ピント「リビングルーム」』 『東京、4月から5月に行くべきアート展』 『ベルギー発のスキャンダラスなダンスカンパニー、「ピーピング・トム」が来日公演』 『貧困、階級、女性、性的マイノリティーの解放―パンクと社会の関係性を考える』 『「東京都庭園美術館」で年に一度の建物公開展、今年は邸宅主の記憶を辿る』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

恋愛・生殖の有無に関係ない愛を描く映画「何をそんなに慎ましく」
全ての愛が、等しく語られる世の中を目指して――。吉田奈津美の監督長編映画「何をそんなに慎ましく」の制作が決定した。それに伴い、2023年6月30日(金) 23時59分まで、制作費支援のクラウドファンディングを実施している。 本作品に登場するのは、「愛」を知らなかった主人公・草。恋愛至上主義的な世の中で、「恋愛関係ではない」がそれと同等に強固な関係性を築く「自分たちだけの愛」の形を見つけるまでの物語が展開されている。 映画『何をそんなに慎ましく』制作準備特報 第一弾 メインキャストは、雑誌やミュージックビデオを中心に活動する野内まる、話題作に多数出演している山本奈衣瑠、俳優業にとどまらず監督としても活動する須藤蓮の3人だ。 他者との関わり方が複雑化し、あらゆる関係性が存在する世の中で、私たちが大切にしたい「誰か」との関係は全て「恋愛」に当てはまるのだろうか。他者と恋愛関係を築くことが当たり前とされる社会では、名前の付いていない感情を「恋愛」に無理に当てはめようとする人は少なくない。 今の日本の婚姻制度は、戸籍上異性とされるカップル間にのみ適用される。吉田は、世の中の定義する「恋愛」が生殖可能な異性間に限定されていることにも疑問を感じ、人間関係の新しい選択肢について話し合うきっかけとして、本作品の制作に至った。 誰かを大切にしたいという気持ちがあれば、世の中が定義する「恋愛」に当てはまっていなくても、その関係性は恋愛関係と等しく語られるべきだ。そんな思いを物語に乗せて、映画を作る。 支援は3,000円〜10万円まで選ぶことができ、デジタル写真集やサポーターである大関による「オリジナルワンカップ大関」などのリターンが付いてくる。ぜひ参加して、映画の完成を楽しみに見届けよう。 関連記事 『映画「何をそんなに慎ましく」クラウドファンディングプロジェクト』 『日本のジェンダー観や婚姻制度のあれこれ、もう一度社会の前提を疑おう』 『プライドウィーク開催のLGBTQ+イベント10選』 『人生で観ておくべき、日本映画ベスト50』 『トランスジェンダー、無性愛者を告白した中山咲月の22年間の葛藤』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

貧困、階級、女性、性的マイノリティーの解放―パンクと社会の関係性を考える
2021年から国内6カ所を巡回してきた「Punk! The Revolution of Everyday Life」展が、2023年4月28日(金)〜5月9日(火)、東京藝術大学の毛利嘉孝研究室の主催、倉敷芸術科学大学の川上幸之介研究室の企画により「東京藝術大学大学美術館 陳列館」で開催される。 画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life 「パンク」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は騒がしい音楽、派手なファッション、暴れる観客といったイメージを持つかもしれない。しかし、パンクの原点をたどると、単にそのようなイメージではない側面が分かる。 パンクは一般的にはアメリカのガレージ・ロック・シーンから生まれ、イギリスのバンド、セックス・ピストルズやザ・クラッシュ、ダムドなどの登場をきっかけに広まった、反権威的で社会への批評性を持った音楽だとされている。この「批評性」は、現在では貧困、階級、戦争、女性、人種、性的マイノリティーの解放へと用いられることが多い。 画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life パンク・ロックと現代アートの研究者であり、本展のキュレーターでもある川上幸之介は、本展で取り上げている「橋の下世界音楽祭」を紹介してくれた。 橋の下世界音楽祭は、バンドのTURTLE ISLAND(タートルアイランド)のメンバーである永山愛樹が主催し、2011年の東北大震災をきっかけに「自分たちの暮らしをどうしていくか、みんなで考える場」として生まれた。アジアの近隣諸国からゲストアーティストを招き、「自分たちの住む土地の文化、生活の在り方を見つめ直すような大衆芸術音楽祭」として投げ銭(*)で成立している。 *2022年は新型コロナウイルスの影響によりやむなく入場料を設定した この祭典は単なるライブではなく、障がい者にしか演じられない身体表現を追究するパフォーマンスグループ「劇団態変」を招いた演劇や、野生の動物の解体方法、鍛治、子どものための広場づくりなど、現代社会において失われつつある文化のワークショップも展開されている。 会場はその名の通り、橋の下だ。出展者は自前で電気を用意し、建物はほとんどが廃材で作られている。参加すると「合理化と経済至上主義、大量消費型の使い捨てが主流」という社会への再考が促され、この社会に対して「生きにくい」と感じていた自分を責めるのでなく、他の生き方や考え方を持ってもいいのだと肯定的な考えを与えてくれる。 画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life 川上がパンクに出合ったのは、ザ・ブルーハーツを聞いた小学生時代。イギリスのパンクとアートの魅力に引かれ留学した。そして、現在まで聴いているパンクについて調べることで、パンクが「個」を支えているだけでなく、社会的に弱い立場に置かれた少数の人々を解放し、より良い未来に向けた手立てとなっていることを知る。 さらに、今の世の中が求める「誰一人取り残さない社会」とは何か、それをどのように擁護し得るか、などの問いに対するヒントが与えられていることを知ったという。 画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life 本展では、パンクがこれまでに取り組んできた社会問題に対する実践と批評とは何か、現代に生きる人々の日常生活にどのような影響を与えているのかといった、パンクと日常生活、そして社会との関係性

クィアたちのリアルな声「QUEER VOICE」のアンケート回答者募集
日本は、同性婚法やLGBT差別禁止法などのLGBTQ+に関する法律がいまだ十分ではない。クィア(*1)がアイデンティティーを表明し、自己表現できる場が少ない中、クィアコミュニティーを祝福する「東京レインボープライド」の開催は、社会に大きなインパクトを与えるだろう。 日本初の「プライドパレード」は1994年に開催された。2000年に開かれた「東京レズビアン&ゲイパレード2000」の参加者は約2000人。徐々に規模が拡大し、2019年の「東京レインボープライド」は、総動員数20万4000人まで増加した(*2)。企業や団体も参加し、支援を表明する動きも見られ、かつて語られることのなかったクィアコミュニティーが、少しずつ表に出てきていると考えられる。 このことをポジティブに捉える人がいる一方で、本来の目的から脱線した商業化の側面が行き過ぎてしまっているという意見もある。レインボーカラーのグッズを販売したり、企業の広告を打ち出したりなどコミュニティーに貢献しているようで、実は「ピンクウォッシング」(*3)であったケースも増えている。 現状は、異性愛、シスジェンダー(*4)が主体となる社会で、少数派であるクィアの言葉は抹消されやすい。クィアの立ちはだかる問題を解決するには、クィアの声を届ける必要がある。だが、声が届くためには受け取り側がいなければならない。つまり、当事者だけでなく皆が一緒に考える問題なのだ。 シリーズ「SEX:私の場合」では、性を「枠」ではなく「個人」としてフォーカスし、誰もが持つ「さが」として捉える。今回は、クィアたちの声を届けるための企画「QUEER VOICE」を始動する。 「QUEER VOICE」のアンケート回答者を募集 連載「SEX:私の場合」で「QUEER VOICE」の回答を募集。アンケートの回答はプライドウィーク期間中の掲載を予定。以下の概要を確認の上、回答フォームから応募してほしい。 掲載記事:Time Out 連載「SEX:私の場合」応募要件:クィア(セクシュアルマイノリティー、LGBTQ+)を自認する人回答期間:2023年4月9日(日)までアンケート応募フォーム (*1)「クィア」とは、19世紀の英語圏でゲイを侮辱的に表現する「奇妙な」「変態」といった意味を持つ。当事者が自らをクィアと名乗ることで、開き直った姿勢を示し、ポジティブな言葉として変換された歴史がある。本記事では、クィアコミュニティーにおける歴史的背景を踏まえた上で、クィアを単なる性的マイノリティーではなく、「連帯」という意味合いを含んで示している。また、性的マイノリティーという属性をわかりやすく示すために「LGBTQ+」の単語を使用する場合もある。(*2)「東京レインボープライド『ABOUT PRIDEPARADE』」「東京レインボープライド 2019年度 年間活動報告」(*3)企業や団体が、LGBTQ+コミュニティーへの支援を示す姿勢を持つかのように見せかけ、商業的に消費することを「ピンクウォッシング」という。(*4)一般的に、生まれた時に割り当てられた性と自認する性が一致する人のことを意味する。 関連記事 『SEX:私の場合』 『「なぜ異性が好きなの?」シスヘテロ当事者にインタビュー(前編)』 『祝30周年、伝説のゲイミックスパーティー「the Ring」が5年ぶりに開催』 『東京、LGBTQ+パーティー』 『「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックし

祝30周年、伝説のゲイミックスパーティー「the Ring」が5年ぶりに開催
知る人ぞ知る、クィアパーティーシーンの歴史に名を刻む「the Ring」。今年30周年を迎えるタイミングで、5年ぶりの復活を果たす。2023年4月22日(土)は東京レインボープライドイベントとして公式認定の「東京レインボープライド2023 プライドパレード前夜祭」、23日(日)はプライドウィークの幕開けを飾る「ザ・リング ティー・ダンス」が開催される。 会場は4月に新しくオープンする「東急歌舞伎町タワー」の17階に位置する「ジャム17 ダイニングアンドバー(DINING & BAR JAM17)」だ。クィア(*)イベントでは珍しい、ガールズフロア「エンパワーメントフロア」を含む3つのフロアを用意。22日の前夜祭ではゴーゴーダンサーも加わり、一層豪華な演出が期待される。 Photo:「the Ring」フライヤー イベントでは、都内のクラブシーンで活躍するDJ、ゴーゴーボーイズ&ガールズ、ドラァグクイーンなど、豪華な出演者が勢揃い。ラグジュアリーな空間で、老舗パーティーならではの華麗なエンターテインメントを体験できる。 主催者のMontyは、1990年代から2000年代にかけて東京のクィアパーティーシーンに精力的に取り組んできた。30年前にthe Ringを始めた当時、テレビでゲイが揶揄(やゆ)される描写を目にしたり、LGBTQ+に関する政治的な運動や教育も不十分だったり、社会のLGBTQ+に関する正しい知識はなかったという。 今でも日本では、同性婚やLGBT理解増進法が認められず、クィアコミュニティーへの理解は遅れている。このような現状でthe Ringは、セクシュアリティー、人種、見た目などによる不平等をなくし、LGBTQ+という言葉すらも必要ではなくなるほど「クィアの存在が当たり前」となる社会を作りたいとの思いから開催に至る。 当日チケットは3,000円。現在、前売りチケットを公式ウェブサイトから2,000円で販売中だ。記念すべき復活を2夜連続で祝おう。 *「クィア」とは、19世紀の英語圏でゲイを侮辱的に表現する「奇妙な」「変態」といった意味を持っていた言葉を指す。クィア当事者が自らをクィアを名乗ることで、開き直った姿勢を示し、ポジティブな言葉として変換された歴史がある。本記事では、クィアコミュニティーにおける歴史的背景を踏まえた上で、クィアを単なる性的マイノリティーではなく、「連帯」という意味合いを含んで示している。 関連記事 『the Ring』 『東京、LGBTQ+パーティー』 『ビョークのメイクを施したドラァグクイーン、HUNGRYの来日ツアーが決定』 『「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観』 『両国国技館でMCバトルが初開催、1年ぶりに復帰したSAMが優勝』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

ビョークのメイクを施したドラァグクイーン、HUNGRYの来日ツアーが決定
ドラァググイーンでビジュアルアーティストのHUNGRY(ハングリー)が、4年ぶりに来日。東京と大阪の2都市で「HUNGRY JAPAN TOUR」を開催する。東京公演は2023年3月18日(土)「オア(OR)渋谷」で、大阪公演は3月24日(金)に「club JOULE」で行われる。 HUNGRY JAPAN TOURをサポートするのは、新宿二丁目を拠点に東京の刺激的なカルチャーを発信する進化系のエレクトロパーティー「fancyHIM」と、新時代のクィアパーティー「WASABITCHcream」だ。 fancyHIM過去開催時の写真 パーティーの主役となるHUNGRYは、「ゆがんだドラァグ」の美学を持つビジュアルアーティスト、そしてドラァグクイーンとして活動している。自身のメイクアップ・衣装・パフォーマンスのスキルは世界中で注目され、過去にはビョークのアルバム「Utopia」「Fossora」のメイクアップリーダーを務めた経験を持っている。 Photo: HUNGRY JAPAN TOUR(WASABITCHcream) Photo: HUNGRY JAPAN TOUR(fancyHIM) さらに、「東京ギャル」を代表するドラァグクイーンのKAGUYAとOkiniのユニットグループMAGATAMA、独自の死生観を表現する清水舞手とUFOから構成されたMashUfo、かわいさと残酷さを持ち合わせるRita badkittycatとSHIOによるパフォーマンスも必見だ。 WASABITCHcream過去開催時の写真 WASABITCHcream過去開催時の写真 HUNGRYと作るfancyHIMとWASABITCHcreamのパーティーは、観客を奇妙なナイトナイトライフへと導くに違いない。 関連記事 『HUNGRY JAPAN TOUR』 『東京、LGBTQ+パーティー』 『「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観』 『ジェンダーギャップに抗議せよ、匿名集団「ゲリラ・ガールズ展」が開催』 『東京レインボープライド』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

ジェンダーギャップに抗議せよ、匿名集団「ゲリラ・ガールズ展」が開催
1985年、ニューヨークで結成されたゴリラのマスクを被る匿名のアクティビスト集団、ゲリラ・ガールズが、2023年3月3日(金)〜3月12日(日)の期間、国際女性デーに合わせて「渋谷パルコ」で「ゲリラ・ガールズ展」を開催。 インパクトのあるヴィジュアルで「Reinventing the "F" word: feminism!」(「F」ワードの再解釈:フェミニズム!)をモットーに、アート界のジェンダーギャップの問題へ皮肉とユーモアを織り交ぜて暴き出す。彼女たちによる独自の調査や統計、批評をもとにした作品を通し、ジェンダー格差が拡大する日本に息を吹き込む展示だ。本展では表現の現場調査団による統計資料も加わる。 画像提供:ゲリラ・ガールズ展 ハラスメント被害から社会の仕組みに問いかける 主催のセレクトブティックショップ「Sister」(シスター)は、2019年より国際女性デーに合わせてイベントを企画している。その背景は、Sisterのオーナーである長尾悠美も過去にハラスメントを経験し、社会の仕組みに疑問を抱き始めたことにある。 当時、ハラスメント被害を周囲に相談するものの「よくあること」「仕方ないこと」としてとらえられてしまい、日本の女性が置かれる立場というものを痛感したという。一方で海外の友人に相談すると、「具体的にどのようにアクションを取るべきか」など直接的な解決策について返答があったことを振り返った。 いまだにジェンダー格差の大きい日本--。2022年に世界経済フォーラムが算出したジェンダーギャップ指数のスコアをみると、日本は146カ国中116位だ。具体的な数字からも、日本社会の水面下にはジェンダー格差の問題が隠れていることがわかる。 このような中、Sisterは過去にドイツ発マガジン「TISSUE MAGAZINE」や、フェミニストのための出版社「エトセトラブックス」(グッズ提供)、メキシコのフェミニストアーティストのモニカ・メイヤーなど、国内外を問わずさまざまなアーティストと一緒に企画を行ってきた。 画像提供:ゲリラ・ガールズ展 新たな価値観を取り入れて、議論が生まれる可能性を 本展は倉敷芸術科学大学の川上幸之介研究室による全面協力のもと、ゲリラ・ガールズとのコラボレーションが実現した。准教授を務める川上は、2020年にゲリラ・ガールズの個展を主催した背景があり、アートを通してジェンダーの問題やフェミニズム以外にも、様々な社会問題について再考を促している。 コロナ禍から徐々に通常の生活を取り戻しつつある世の中で、ウクライナ侵攻が始まった現在、川上は、災害・人災の中で最も苦境に立たされるのは子供、女性、障がい者、高齢者、貧困層、移民といった社会的弱者といわれる人たちであることを指摘。また「問題について入りやすくするためには、視覚的にインパクトを持ち、ユニークな表現としてのアートが必要」と回答し、日本の現状について以下のコメントを寄せた。 「例えばジェンダーギャップ指数を参照すると、日本はずっと低い水準の数字のままです。この問題は一見、『女性という当事者だけの問題』だととらえられたり、『フェミニズム』という運動自体も日本では『反男性的な活動』だと思われがちです。しかし、男性も家父長主義(一家の長である男性が支配権を持つ家族制度から、このような原理に基づく社会の支配形態)的な考えによって、無自覚にしろ自覚的にしろ苦しめられている側面があります。 私たちは、この社会の中で偏差値の高い学校に入り、有名企業に就職すること、お金持ちになることこそが

社会の「共有地」を生み出すアートの祭典「シアターコモンズ」が開催
演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すパフォーミングアーツの祭典「シアターコモンズ'23」が、2023年2月23日(木・祝)〜3月5日(日)にプログラムを発足。日常生活や都市空間の中にある「演技」の存在意義とは何か。ジャンルを超越したアーティストたちが集結し、新しい体験を与える。 画像提供:シアターコモンズ 第7回を迎える今年は「Rebooting Touch 触覚の再起動」をテーマに、相馬千秋がキュレーションを担当。コロナ禍で「触れられない時代」から次のフェーズに進もうとしている一方で、ロシアによるウクライナ侵攻やインフレーションなど、不確実な世の中でどのように生き残るかも課題として残っている。そんな「触れられない時代」に触れられる方法を求めて、触覚の可能性を改めて考え直す機会となるだろう。 Photo:「火を運ぶプロメテウス」©️Meiro Koizumi 参加アーティストの小泉明郎は、VR演劇「縛られたプロメテウス」(2019年)、VR彫刻「解放されたプロメテウス」(2021年)に続くプロメテウス3部作の最終章「火を運ぶプロメテウス」を発表する予定だ。 Photo: Kayo Yamashita 雌豚や害虫を玩具的にデフォルメしたボディースーツに身を包むサエボーグは、家畜動物として、ジェンダー・年代・言語を超えたコミュニケーションを行う。今回は新作の「ソウルトピア」を披露。初のメタバースならぬ「サエバース」に挑む。サエボーグの着ぐるみであるインフレータブル構造のラテックスは、着用すると感覚が変わり、不自由な身体になるというところが特徴だ。今回は、これらの着ぐるみのアバターに参加者自身が変身してもらう。 サエボーグは「実際のラテックスの着心地とは違いますが、VR未経験者は3歳児のような状態になる、という意味でとても似ています。この不自由な状況を動物としての視点で捉え直し、『誰かから助けてもらうこと、誰かと何かをシェアすること』の喜びを意識しながら楽しんでくださると幸いです。なりきればなりきるほど楽しくなるので、どうか自分のハートを解放して参加いただけることを心待ちにしております。みんなで一緒に叫ぼう、ブー!ブー!」とコメントを残した。 画像提供:シアターコモンズ 映画監督・作家の中村佑子も忘れてはならない。今回は、エッセイを書くように映像をつづる映像表現と散文表現を開拓する「シネエッセイ」制作のワークショップを展開する。中村は、シネエッセイについてこのような独自の見解を示している。 「シネエッセイとは映像でつづる随想だが、優れて現代的なものだと感じている。戦争があり疫病があり、グローバリズムの広がりの中で新自由主義社会がますます拡大再生産を続けている今、内面的なひらめきやかがやきの瞬間を見つめるまなざしが開放をもたらすはずだと思うからだ。小さな予兆や、目を凝らさなければ消えてなくなってしまうような光の明滅は、個人の中にこそ存在する。その動きに敏感に反応することが、シネエッセイのまなざしだと思っている」 さらに、ワークショップ参加者に向けて「何がテーマなのか、何が対象物として写っているのかと問われることのない、自由で安心できる場所で作ることに向き合ってもらいたいと思っている。 言葉にすることとは、反語的に言葉にならない不文分な領域を見つめること。その行為は、自分を守るとりでにもなるはずだ。それぞれが切実な思いを抱えていて、何か作りたいと思っている23人が集まった。彼/彼女らの内面の旅に、これから短い期間付き合うのだ

ベルギー発のスキャンダラスなダンスカンパニー、「ピーピング・トム」が来日公演
脅威の身体能力と奇想天外な物語を展開するダンスカンパニーの「ピーピング・トム」が、ベルギーから来日。2023年2月6日(月)〜8日(水)、「世田谷パブリックシアター」で公演「マザー」を発表する。同月には兵庫、高知、愛知でのツアー公演も予定されている。 人間業とは信じがたいオリジナルのムーブメントと衝撃的な世界観で観客を魅了するのは、ピーピング・トムのメンバーであるガブリエラ・カリーソとフランク・シャルティエだ。2人は現代社会の抱える闇に切り込み、過酷なシーンでさえもどこか美しさ、ユーモア、愛を感じるパフォーマンスを実践する。 Photo: Oleg Degtiarov 過去には「Le Sous Sol/土の下」(2009年)、「ヴァンデンブランデン通り32 番地」(2010年)、「A Louer/フォー・レント」(2014年)、「ファーザー」(2017年)など、日本で継続的に公演を行ってきた。「マザー」は、前作「ファーザー」から2020年の延期を経て、6年ぶりの待望の公演となる。 Photo: Oleg Degtiarov 本作品は、愛情、欲望、恐れ、苦悩、激しさなど、「母性」にまつわる複数のイメージや、母親としての記憶、エピソードを描写する。さらには美術館を連想させる無機質な空間が、時に私邸の客間、病院の待合室、火葬場などに変化し、観客が視覚的にスリリングな世界観を堪能できるトリックが隠されている。 Photo: Oleg Degtiarov ピーピング・トムのメンバーであるガブリエラは、本作について「記憶にまつわる物語であり、欲望、恐れ、苦しみ、または暴力性といったさまざまな母親像についての探求です。日本の観客の皆さまを、この潜在意識を巡る旅へとお連れするのが待ち遠しくてなりません」とコメントした。 Photo: Herman Sorgeloos さらに、「ピーピング・トム結成初期から、日本の皆さまは私たちを温かく迎え入れてくださり、私たちにとって特別な存在であり続けてきました。パンデミックにより私たちのはやる気持ちは少々おあずけとなりましたが、ついにようやく日本に戻ることがかない、愛する日本の観客の皆さまと心を交わせることにワクワクしています」と、日本公演に向けての心境を明かした。 関連記事 『マザー』 『2023年、見逃せない芸術祭6選』 『大岡山から世界とつながる、音楽レーベル主宰のギャラリー「ロウ」がオープン』 『リアルすぎる、あの草間彌生ロボットが東京にやってきた』 『東京、1月から2月に行くべきアート展』 『インタビュー:森山開次×ひびのこづえ』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら