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Naomi

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ライター

アート デザイン 工芸 民藝 ミュージアムにまつわるインタビュアー・ライター・企画編集・コラムニスト

Articles (2)

東京、2月から3月に行くべきアート展

東京、2月から3月に行くべきアート展

タイムアウト東京 > カルチャー > 東京、2月から3月に行くべきアート展 東京の人気ギャラリーや美術館で開催するアート展を紹介。2月から3月にかけては、、国立西洋美術館初の現代美術展やバンクシー、カウズ、インベーダーなどのアーバンアートが集結した展示、多彩な映像表現を紹介する国際フェスティバルなど注目の展示が目白押しだ。 関連記事 『2月から3月に行くべきアニメ展示』『東京のベストパブリックアート』

東京、2023年に行くべきアート展

東京、2023年に行くべきアート展

タイムアウト東京 > カルチャー > 東京、2023年に行くべきアート展 江戸時代の日本美術から印象派の傑作まで、2023年もさまざまな展覧会が行われる。ファッション界からは「ディオール」や「イヴ・サンローラン」のようなハイブランドを特集した大規模な展示、「愛」をテーマにした「ルーヴル美術館」のコレクション展などだ。 そのほかにも、今年はアンリ・マティスやデイヴィッド・ホックニー、アントニ・ガウディなど巨匠たちのアートが堪能できる。 アートは実際に観ると感動もひとしお。ぜひ、美術館やアートギャラリーに足を運んでほしい。ここでは、カレンダーに書き込んでおくべき展示を紹介しよう。 関連記事『東京、無料で入れる美術館・博物25選』『東京のベストパブリックアート』

News (14)

逆境から生まれた切り紙絵「マティス 自由なフォルム」展が開幕

逆境から生まれた切り紙絵「マティス 自由なフォルム」展が開幕

「色彩の魔術師」とも呼ばれた20世紀フランス絵画の巨匠、アンリ・マティス(Henri Matisse)。彼が後半生で精力的に取り組んだ「切り紙絵」の作品群にフォーカスする日本初の大規模展が、乃木坂の「国立新美術館」で開幕した。 フランス南部にある「ニース市マティス美術館」が全面協力し、絵画、彫刻、版画、テキスタイルなどの作品や資料を約150点紹介。本展に合わせて修復された、幅8メートルを超える切り紙絵の大作「花と果実」(1952~53年)や、最晩年に携わったことで知られる「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」の空間再現など、展示室で体感してほしい見どころが満載だ。 Photo: Naomi展示風景 © Succession H. Matisse 病床でたまたま出会った絵画制作が人生を決める 本展の前半、セクション1~3では、50代でニースへ移住するまでの半生と作品の変遷を、ほぼ時系列に沿ってたどることができる。 幼い頃から病弱だったマティスが独学で絵を描き始めたのは、20代前半のこと。虫垂炎で入院した病床で、母親から絵の具のセットをプレゼントされたのがきっかけだった。当時は法律事務所での仕事に就いたばかりだったが、次第に絵画制作に魅了されていく。 パリの国立美術学校で、象徴主義の画家であるギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau)と出会い、彼のアトリエで制作したり、「ルーヴル美術館」で模写に励んだりと研さんを重ねた。また、印象主義のカミーユ・ピサロ(Camille Pissarro)や、新印象主義のポール・シニャック(Paul Victor Jules Signac)ら、同時代の画家たちとも交流している。 Photo: Naomi展示風景 © Succession H. Matisse そして、北フランスで生まれ育ったマティスが、南フランスのトゥールーズやコルシカなど各地を転々とする中で、温暖な気候と明るい日差しの風景に出合ったことが光の表現と色彩の探求という大きなテーマにつながるなど、いくつもの転機がマティスの絵画表現を飛躍させていく。 特に1905年、当時フランス領だったスペイン・カタルーニャの町、コリウールに滞在して描いた作品群は、同年秋に開かれた展覧会「サロン・ドートンヌ」に出品され、後に「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれる潮流を生む契機となった。 Photo: Naomi© Succession H. Matisse 本展では、油画だけではなく、版画やデッサンも多数紹介されている。特に、1941~42年にかけて描いた160点をまとめたデッサン集「テーマとヴァリエーション」(1943年)に掲載された作品群をはじめ、陰影を緻密に描き込んだものやシンプルな線で描かれたデッサンは、見比べる楽しさがあって興味深い。 絵画と彫刻の連作やアトリエで愛用した品々を紹介 本展の見どころの一つに、絵画と彫刻の関係性が挙げられるだろう。絵画と並行しながら、彫刻の制作も学んだマティスは、同じモデルや主題を絵画と彫刻の両方で表現することにも取り組んできた。また、細部の表現を少しずつ変えた彫刻の連作シリーズも手がけている。 今回展示されたブロンズの彫刻作品は、「オルセー美術館」がニース市の「マティス美術館」へ寄託しているもの。貴重な木彫作品とともに、ここまで多くのブロンズ彫刻の作品が並ぶのは珍しい機会だろう。絵画表現との共通点を探してみるなど、じっくりと鑑賞して楽しんでほしい。 Photo: Naomi展示風景 © Succession H. Ma

小林武史が総合プロデュース、「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」始まる

小林武史が総合プロデュース、「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」始まる

千葉県市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市が連携し、官民協同で初めて開催する大規模イベント「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」。2024年3月23日(土)から5月26日(日)まで、アート作品の展示と、ダンスや音楽ライブがスタートするのを前に、総合プロデューサーの小林武史と、アートディレクター・北川フラムが、報道関係者向けの企画発表会に登場した。内房総の各地に点在する展示スペースや出展作家、パフォーマンスを予定しているミュージシャンらの発表を行った。 Photo: Naomi「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」総合プロデューサー 小林武史 画像提供:百年後芸術祭 「百年後芸術祭」は、千葉県誕生150周年記念事業の一環として、2023年秋にスタートした。百年後の新しい未来を創っていくために、アートやクリエーティブ、テクノロジーの力を融合し、持続可能なプラットフォームとしての芸術祭を目指して活動している。 これまでに音楽・映像・ダンスと、ドローンによる演出が融合したパフォーマンス作品「en Live Art Performance」が、2023年秋、小林が総合プロデュースする木更津市の「クルックフィールズ(KURKKU FIELDS)」で披露され、大きな話題を呼んだ。また、内房総の魅力的な食材を集結させた、食と学びの新たな食体験イベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」も開催されている。 画像提供「百年後芸術祭」「en Live Art Performance」 「LIFE ART」「LIVE ART」を両軸に展開 49日間にわたって2024年3月23日(土)から5月26日(日)まで開催される本芸術祭は、「LIFE ART」をテーマに約80組の作家が参加するアート作品の展示と、「LIVE ART」を旗印に小林がプロデュースするスペシャルライブ4公演が行われる。 サブタイトルに掲げられた「環境と欲望」ついて小林は、「今さまざまな問題をはらんでいるのは欲望でしょう。問われているのは、欲望を捉え直したり、質を変えたり、工夫することを考え、想像し、表現しながら、新しい次元に向かうこと。100年後というのは、ここにいるほとんどの人がいない未来だからこそ、利他的な感覚が生まれるのでは」と話した。 Photo: Naomi「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」総合プロデューサー 小林武史 また、千葉・内房総というエリアで芸術祭を開催する意味を、「東京に隣接し経済成長を支えてきた一方で、自然の力も残っている場所。都市と自然、アートとビジネス、現在と未来、そして環境と欲望、さまざまなカウンターパートを考える場としてもふさわしい」とコメントしている。 アート作品の展示をディレクションする北川は、2014年から市原市で3年に1度開催されてきた芸術祭「いちはらアート×ミックス」の総合ディレクターでもある。今回は5市に点在する展示エリア全てを巡り、そこに暮らす人々の生活、地域の歴史や営みを、アーティストらが作品として表現する構想を語った。 Photo: Naomi「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」アートディレクター 北川フラム 内房総を旅するように楽しみたい展示の数々 アートフェスが開催される内房総の5市は、それぞれに特色と魅力がたっぷりあるエリアだ。東京都内からは少し遠いイメージがあるかもしれないが、例えば木更津市なら、JRなどの鉄道、または東京駅八重洲口や渋谷・品川・新宿から高速バスを利用して約90分で到着できる。

ヴィム・ヴェンダースの電子絵画を初公開する展覧会が中目黒で開催

ヴィム・ヴェンダースの電子絵画を初公開する展覧会が中目黒で開催

中目黒駅近くのアートギャラリー「N&A Art SITE」で、現代ドイツを代表する映画監督で写真家、ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)の展覧会「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし / Wim Wenders’s Lucid Gaze」が開幕した。 30年以上前に公開された映画「夢の涯てまでも」から制作された、鮮烈な電子絵画作品など、初公開の貴重な作品や映像が楽しめる展示だ。同作でアソシエイトプロデューサーを務めた御影雅良(みかげ・まさよし)が企画し実現した。 劇場公開中の最新作「PERFECT DAYS」が、最高傑作とも言われるほど大きな話題を集める今、写真家・アーティストとしてのヴェンダースの魅力を改めて味わおう。 Photo: Naomi ヴィム・ヴェンダースは1945年ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。ミュンヘン・テレビ映画大学で実験的な短編作品を制作した後、「ゴールキーパーの不安」(1971)で長編映画デビュー。「パリ、テキサス」(1984)で「カンヌ国際映画祭」の最高賞であるパルムドールを、「ベルリン・天使の詩」(1987)でカンヌ国際映画祭で監督賞を、「ミリオンダラー・ホテル」(2000)で「ベルリン国際映画祭」の銀熊賞を受賞したほか、ファッションデザイナーの山本耀司を追った「都市とモードのビデオノート」(1989)や「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999)などのドキュメンタリー作品も手がけている。 長年にわたって小津安二郎監督の作品と、日本や日本の文化を敬愛しており、1983年4月の来日時には、小津が描いた“東京”を探して歩き回り、『東京物語』主演の笠智衆(りゅう・ちしゅう)や、小津組の名カメラマン厚田雄春(あつた・ゆうはる)との対話を撮影し、『東京画』(1985)として発表した。 「エレクトロニック・ペインティング」全12点を初公開 本展の由来である映画「夢の涯てまでも」は、1991年にドイツ、アメリカ、フランス、オーストラリア、日本の合同で制作されたSF大作。主人公が世界を旅しながら撮影したイメージを、盲目の母親が、最新鋭の機械を通して脳内で見る様子が作中で描かれているが、まさにそれが本展で初公開となる電子絵画作品「エレクトロニック・ペインティング(Electronic Painteing)」全12点につながっている。 Photo: Naomi「エレクトロニック・ペインティング」 ヴェンダースは、誰も観たことのない映像表現を生み出すべく、当時、世界最先端と言われた日本の「ハイビジョン(Hi-Vision)」技術を用いて、「夢のシークエンス」と名付けた一連の映像作品を完成させた。制作時は東京に滞在し、8ミリフィルムや16ミリフィルム、写真やドローイングなどのアナログデータをデジタルデータに変換できる、ソニーのプロトタイプ機材が揃ったNHKの編集室へ通い詰めたという。 また当時、諸般の事情でお蔵入りとなった「エレクトロニック・ペインティング」のプリント12枚セット「ELECTRONIC PAINTEING BY WIM WENDEERS」が、30年以上の時を経て、本展の会場で購入可能に。長らく倉庫で大切に保管されてきたため、新品同様の状態、かつ限られた点数のみしか制作されていないので、世界的にみても非常に貴重だ。 会場では、笠智衆に宛てたヴェンダースの直筆サイン入りの「ELECTRONIC PAINTEING BY WIM WENDEERS」のケースも展示されている。残念ながら「夢の涯てまでも」公開翌年に

「SHIBUYA SKY」で中﨑透の新作インスタレーション展が開幕

「SHIBUYA SKY」で中﨑透の新作インスタレーション展が開幕

渋谷駅に直結した商業ビル「渋谷スクランブルスクエア」の高層階に位置し、渋谷や東京の街並みを一望できる人気の展望施設「SHIBUYA SKY」の46階屋内展望回廊「SKY GALLERY」で、美術家・中﨑透(なかざき・とおる)の新作展「Ding-dong, ding-dong -Bells ringing at the bottom of the valley-」がスタートした。 中﨑透は1976年茨城県水戸市生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科を経て、現在は地元である水戸市を拠点に活動している。言葉やイメージといった共通認識の中に生じるズレをテーマに、看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せずに展開する作品で知られる。 Photo: Keisuke Tanigawa中﨑透 2006年末より「Nadegata Instant Party」を結成し、ユニットとしても活動している。2022年には「越後妻有 大地の芸術祭」への参加や「水戸芸術館」での自叙伝的な個展「中﨑透 フィクション・トラベラー」などが評価され、「令和4年度(第73回)芸術選奨新人賞」を受賞したことは、記憶に新しい。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 中﨑は近年、その土地にゆかりのある人々に話を聞き、言葉の中から出合ったエピソードを、その場所に残るものや自身の制作物を組み合わせ、土地の歴史や個人的な記憶を編集するように作品にしている。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 今回、渋谷という日本の都市部で制作するに当たり、たった数人の話を聞いて渋谷を語ることにおこがましさを感じたともいうが、宇田川町で30年以上続く、日本で唯一と言ってもいいオリジナルベルボトムの専門店「ディーディー(DEE★DEE)」の店主、津田幸英を起点に本展を構想した。 「渋谷は地理的に見て、谷底に位置する街。その谷に長年続くベルボトムの店がある。この展望施設から東京や渋谷を見下ろす中で、足元から地に足をつけて生きる人々の鐘の音が聴こえてくるようなイメージが浮かびました」と中﨑は語る。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 インタビューは津田に加え、渋谷駅周辺の大規模再開発に携わってきた渋谷再開発協会の横山和理と、日常を渋谷の街で過ごしてきたモデルの筒井香菜の3人に実施した。 ごく個人的な写真や、エピソードに出てくるものなどをそれぞれから借りるなどして作品へと盛り込みつつ、37のエピソードとともに、絵画や立体、グラフィック、映像、人工知能(AI)が生成した画像まで、多種多様な展示作品が完成した。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 中﨑は制作を進めていく中で、「3名ともとても個性的で、悩みながらも自分自身が自分でいることを通している人々」という印象を抱いたという。 「渋谷は昔からカルチャーの街であり、個性的な人々がたくさん集まっている場所だったと思うが、自分が自分らしくあっていい、自分らしくあることを許容するような都市なのかもしれません。屋上から街を見渡したとき、その中で一つ一つのドラマが起こっていることや、自分たちの生活が存在していることに、展覧会を通してイメージを巡らせてもらえたら」と話した。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 Photo: Keisuke Tanigawa展示

帝国ホテル二代目本館を設計したフランク・ロイド・ライトの回顧展が汐留で開幕

帝国ホテル二代目本館を設計したフランク・ロイド・ライトの回顧展が汐留で開幕

アメリカ近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)の展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」展が、東京・汐留の「パナソニック汐留美術館」で開幕した。 ニューヨークの「グッゲンハイム美術館」やペンシルベニア州の「カウフマン邸(落水荘)」など、手がけた建築群が世界遺産になり、92年の生涯で1000を超えるプロジェクトと500以上の設計を実現した、偉大なる建築家の四半世紀ぶりの大規模国内展だ。 アメリカ・コロンビア大学の「エイヴリー建築美術図書館」が進めている、5万点を超えるアーカイブ資料の最新の研究成果をもとに、米フランク・ロイド・ライト財団の協力も得て日米共同でキュレーション。7つのセクションと41のストーリーで、ライトの人生と世界の建築デザインに遺した功績をひもといている。 Photo:Naomi展示風景 日本の風景や浮世絵に影響を受けた精緻で華麗な建築図面 セクション1「モダン誕生 シカゴ─東京、浮世絵的世界観」では、建築家としてのキャリア初期のライトと、当時の日本との関わりに注目する。20代半ばにシカゴの建築事務所で働き始め、1893年に「シカゴ万国博覧会」で初めて日本の文化に触れた。時はジャポニズムの時代であり日本の浮世絵に魅了されたライトは、1905年に初来日。翌年には自ら買い付けた浮世絵で展覧会を企画し「シカゴ美術館」で開催したほど、熱烈な浮世絵コレクター兼ディーラーとなり、生涯にわたって日本文化やデザインに触発されていたという。 Photo:Naomi展示風景 さらには、日本で見た風景や浮世絵の構図なども参考に、風景画のようなまったく新しい建築図面を考案した。それまで建物のみで構成されるのが主流だった図面に、庭の植物や周辺のランドスケープまでも精緻(せいち)に描き込んだ。多数の貴重な肉筆図面の数々が本展の見どころの一つと言えるが、ライトが愛好した歌川広重などの浮世絵と図面のデザインやレイアウトを見比べ、共通点などを探してみるのも興味深い。 Photo:Naomi展示風景 洋の東西を融合させた総合芸術の空間「二代目帝国ホテル」  ライトは1913年以降、片道1か月もかかる船旅で7度も来日し、延べ3年にわたって日本に滞在。16のプロジェクトを手がけ、8件が実現した。兵庫県芦屋市にある「山邑邸(現ヨドコウ迎賓館)」など4件が現存しているが、「帝国ホテル二代目本館(現存は博物館明治村に一部移築保存)」はその生涯の中でも最大規模の建築だった。 Photo:Naomi「帝国ホテル二代目本館」模型(2023年、京都工芸繊維大学が3Dスキャンデータをもとに3Dプリンターでレプリカ制作) 本展の主軸とも言える、セクション4「交差する世界に建つ帝国ホテル」では、建物の全容がわかる模型のレプリカを3Dプリンターで復元展示している。また、ライトがデザインしたホテルの椅子やテーブル、食器、テラコッタの装飾ブロックや照明が、多数の写真など当時の資料群とともに紹介されている。 Photo:Naomiライトがデザインした帝国ホテル二代目本館の椅子 帝国ホテル二代目本館は、落成披露の当日に関東大震災が起きたことでも有名だが、日本の寺院建築やメソアメリカなどの階段型ピラミッドをヒントに、洋の東西を融合させたデザインで、総合芸術としての空間を初めて日本にもたらした。ライトの存在と二代目帝国ホテルが、後進の日本人建築家たちに多大なる影響を与えたのは言うまでもないだろう。 Photo:Naomiライト直筆の

落合陽一の最新展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」が麻布台ヒルズで開幕

落合陽一の最新展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」が麻布台ヒルズで開幕

メディアアーティスト、落合陽一の個展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」が、麻布台ヒルズの「ギャラリー&レストラン 舞台裏」で開幕した。近年発表してきた写真や映像作品に加え、音と光に包まれて輝く茶室「ヌル庵」で、亭主・落合陽一がしつらえた茶事に参加できる体験型インスタレーション展だ。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 会場は、アートギャラリーとレストランが一帯となったスペース。六本木の「アートかビーフンか白厨」などを運営するThe Chain Museum社が、麻布台ヒルズの開業とともにオープンさせた。 落合は2020年秋ごろから、裏千家教授・北見宗幸のもとで茶道の稽古を重ねているが、「ここでの展示をオファーされたときから、茶室の設置を構想した」と言い、四方の壁が半透明の光り輝く茶室「ヌル庵」をギャラリースペースに登場させた。 Photo: Keisuke Tanigawa落合陽一 レストランには茶碗などの道具を準備する水屋(みずや)に、同店に隣接した麻布台ヒルズの中庭は、茶室建築における待合と庭露地(茶庭)に見立てられ、樺細工の煙草盆を置くなど、細部まで茶道の設えに沿っている。 動く床の間を前に菓子と薄茶を楽しむ「落合流茶事」 展示された作品群は無料で鑑賞でき、茶室の外観を眺めながらの飲食も可能だが、本展は事前予約制(有料)の「落合流茶事」に参加してこそ、全容が体感できる。茶道経験の有無を問わず、誰でも楽しめる約30分ほどの会なので、安心して申し込んでほしい。 茶事は、落合による展示ステートメントを読み、直筆の「ヌル庵の心得」が記された和紙が手渡されるところから始まる。茶道の作法にのっとるように、中庭のつくばい(のようなもの)や、待合での一時の静寂を経て、会場奥に置かれた黒電話を案内される。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 通話の相手は、対話型生成AIで落合の作品でもある「オブジェクト指向菩薩」。茶席における亭主との問答のようでありながら、新鮮さと驚き、ある種の不気味さまでも漂う、不思議な感覚を味わえる。 いよいよ席入りを案内され、小さなにじり口から茶室「ヌル庵」へ。床の間はシルバーに輝く鏡面で、古木の花台に「銀口魚 再物化する波 Ⅲ」(2022年)が飾られている。壁の向こうに展示作品が透けて見え、照明の効果もあってか、従来の茶室のイメージと全く異なる混沌さが興味深い。 茶道では、釜の湯が沸いたり、雨や風が吹いたり、と、さまざまな物音を茶室の中で味わうことも大切にされるが、「ヌル庵」の中でもまさに音が作品の重要な要素となっていた。 Photo: Keisuke Tanigawa茶室「ヌル庵」 加えて、菓子がのせられた銘々皿は古墳時代の須恵器といわれる欠片が、一人一人に出された茶碗は、呼び継ぎされた江戸時代のものや、釉薬(ゆうやく)のグラデーションが美しい景色を作るものが用いられ、いずれも趣向が凝っている。 茶事を構成する全ての要素が、亭主である落合が選び取り合わせた「作品」であり、茶室を出る頃には、本展のタイトル「騒即是寂∽寂即是騒」の意味を実感することだろう。 なお、茶事体験前に併設されたレストランを訪れれば、まるで茶事で懐石をいただくような時間の過ごし方もでき、本展をより楽しめるはずだ。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 過去展が伏線のようにつながった空間 落合はこれまでも、光や音などの波、生物、日本美術や茶道、禅、仏教など多種多様な物事と、生成AIや映像、写

刀剣や書など日本美術に革新、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が東京国立博物館で開幕

刀剣や書など日本美術に革新、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が東京国立博物館で開幕

本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ、1558〜1637年)は、室町時代から江戸初期にかけて京都で活躍し、後世の日本美術に多大なる影響を与えたマルチアーティストでありプロデューサーだ。刀剣の鑑定や研磨を行う名家に生まれ、書の達人として広く知られただけではなく、漆芸の意匠や出版、陶芸など多くの芸術分野に関わり、天才絵師、俵屋宗達や職人らとともに、かつてない表現や作品を手がけた。一方で、権力者にこびへつらうことを嫌う「異風者(いふうもの)」ともいわれた光悦。その最新研究を反映した特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が、上野の「東京国立博物館」でスタートした。 斬新過ぎる国宝が来場者を迎える 本展の冒頭に展示されたのが、キービジュアルにも登場している国宝「舟橋蒔絵硯箱(ふなばしまきえすずりばこ)」。一本の木から削り出された、漆塗りのふた付きの箱だが、何といっても山のように膨らんだふたのデザインは、現代の私たちが見ても相当なインパクトだ。「後撰和歌集」にある舟橋が登場する和歌を書写した、光悦の美しい文字を全体にあしらい、中央を横切る橋を模した鉛は、制作当時、銀色に光輝いていたと考えられる。 Photo: Keisuke Tanigawa「舟橋蒔絵硯箱」 江戸時代(東京国立博物館蔵) 続く第1章「本阿弥家の家職と法華信仰―光悦芸術の源泉」は、あまりに多才だったゆえに実像がつかみきれていない光悦の足跡を、本阿弥家の歴史と、当時の日蓮法華宗への信仰を手がかりに読み解く展示だ。 現代も続く本阿弥家は、当時から刀剣の研磨や鑑定を行う刀剣界の権威で、光悦の美的感覚や審美眼は自然と磨かれていく。また刀鍛冶や漆芸、金工などの職人たちと本阿弥家は、ともに日蓮法華宗に帰依し、信仰を介して強い結びつきを持っていた。展示室には、本阿弥家が別格の品と鑑定した刀剣、郷義弘「刀 金象嵌銘 江磨上 光徳(花押)(名物 北野江)」をはじめ、重要文化財に指定された名刀の数々が紹介されている。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 また、光悦が常に持っていた指料(さしりょう)と伝えられる唯一の「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」と、それを納めていた鞘(さや)「刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀」が観られるのも貴重な機会だ。銘にある「花形見」とは「花筐」とも書き、花などを摘んで入れる籠(かご)のこと。光悦が愛読した世阿弥作と伝わる謡曲「花筐」に由来する可能性が指摘されている。短刀には光悦直筆の文字が刻まれているが、そこに込めた光悦の思いは、会場で利用できる音声ガイドや公式図録の論考で確かめてほしい。 Photo: Keisuke Tanigawa「刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀」 江戸時代 Photo: Keisuke Tanigawa「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」 江戸時代 また、本阿弥一門にゆかりのある寺院や菩提所(ぼだいじょ)で、門などに掲げられている扁額(へんがく)が、今回初めて寺院外で展示された。続く第2章「謡本と光悦蒔絵―炸裂する言葉とかたち」でも、光悦が関与した漆芸として唯一の基準作例「花唐草文螺鈿経箱」を展示している。いずれも光悦が書いた文字を使っており、日蓮法華宗へのあつい信仰を象徴する資料といえる。 Photo: Keisuke Tanigawa展示風景 Photo: Keisuke Tanigawa「花唐草文螺鈿経箱」 江戸時代(京都・本法寺蔵) 世界に一つしかない最貴重本「光悦謡本」 謡本(うたいぼん)とは、能で謡われる言葉や節回しの記号を記した本

須藤玲子「NUNO」の大規模展が開催、ディレクションには齋藤精一

須藤玲子「NUNO」の大規模展が開催、ディレクションには齋藤精一

「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」「メトロポリタン美術館」「ヴィクトリア&アルバート博物館」など、世界の名だたるミュージアムに作品が収蔵されているテキスタイルデザイナー・須藤玲子の大規模個展「須藤玲子:NUNOの布づくり」が茨城県水戸市で開催される。 須藤率いるテキスタイル・デザインスタジオのNUNOが、40年にわたって生み出してきたユニークな作品を紹介する同展。2019年に香港のアートセンター「Centre for Heritage, Arts and Textile(​CHAT​)」で企画・開催され、「ジャパン・ハウス ロンドン」やスイスへ巡回したものだ。 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile) Hong Kong テキスタイルプランナーの先駆者だった新井淳一らとともに、1980年代に須藤が立ち上げたテキスタイルブランド「NUNO」は、日本各地の伝統的な染織技術や職人らとの協業にこだわりながら、最先端技術を駆使した素材開発など、常に革新的なテキスタイルづくりに取り組み、国際的な注目を集めてきた。環境問題や、布の再生・再利用にもいち早く目を向けて活動してきたことでも知られている。 「布づくり」の舞台裏をインスタレーションで紹介  本展は、須藤が手がけた代表作のテキスタイルだけではなく、デザインの源泉や制作過程からテキスタイルデザインに注目。デザインの着想源からドローイング、原材料や製作サンプル、職人との試行錯誤、生産の過程まで、普段見ることのできない布づくりの舞台裏を公開する。 また、音や映像で「布づくり」のプロセスを紹介するインスタレーションも登場。工場での生産の様子を、臨場感をもって知ることができるだろう。会場構成は建築家のたしろまさふみが担当。アーティスティックディレクションには、ライゾマティクスでの活動で知られる齋藤精一(現パノラマティクス主宰)が加わる。 《糸乱れ筋》に用いられるニードルパンチ機(部分)展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile) Hong Kong 磯崎建築に現れる「水戸黒」の新作 さらなる見どころは、磯崎新が設計した大空間に現れる、遊び心あふれるインスタレーション「こいのぼり」だ。本展では、色とりどりのNUNOオリジナルテキスタイルに加え、下地に使われる藍染めの青みがかった独特な色が特徴の「水戸黒」の特別なこいのぼりを新たに制作・展示する。水戸黒は江戸初期から水戸藩に伝わる染色技法で、大正時代に化学染織の普及によって途絶えた。しかし水戸市内の職人や地元の人々が、1970年代から再現と継承に取り組んでいる。 海外を巡回してきた本展だが、国内では香川県の「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」での展示を経て、須藤の出身地である茨城県内で満を持しての開催が実現した。会場となる「水戸芸術館現代美術センター」は、本展を企画したCHAT館長兼チーフキュレーターの高橋瑞木が、2003~16年に主任学芸員として勤務していたところでも

お台場から移転、「チームラボボーダレス」が麻布台ヒルズで待望の初公開

お台場から移転、「チームラボボーダレス」が麻布台ヒルズで待望の初公開

アート集団チームラボと森ビルが共同で手がける「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」が、2024年2月9日(金)のオープンに先駆け、2つの展示空間を初公開した。港区に開業する「麻布台ヒルズ」の内覧会で、特別に開催された見学ツアーの模様をレポートする。 Photo:Kisa Toyoshima 2018~22年にお台場で開催されていた「森ビル デジタルアート ミュージアム: チームラボボーダレス」は、境界のないアート群による「地図のないミュージアム」として、世界160以上の国と地域から来館者が訪れた大人気施設だった。 TIME誌の「世界で最も素晴らしい場所 2019年度版(World's Greatest Places 2019)」に選出されたほか、第25回ティア・アワードで「優秀功績賞」を受賞するなど、国内外で権威ある賞を多数受賞し、チームラボの名前が世界中に知られる契機にもつながった。 「認知上の存在」をテーマにした新たなアートプロジェクト オープンする麻布台ヒルズのミュージアムでは、「境界のない1つの世界の中で、さまよい、探索し、発見する」という、お台場での展示コンセプトが大きく進化。新たな作品や日本未公開作品も多数加わり、シンガポールやマカオ、北京などで展開している海外展示や、豊洲で開催中の「チームラボプラネッツ」とも異なる、全く新しい作品群が登場するという。  Photo:Kisa Toyoshima「Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」 ツアーの冒頭、チームラボ代表の猪子寿之が登場し、チームラボは近年、「認知上の存在」をテーマにした新たなアートプロジェクトに取り組んできたと説明。今回公開された新作「Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」を前に、「まさにオープンに向けて準備を続けている最中」と語った。 没入感たっぷりの2つの作品 「Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」は、360度鏡張りの空間に、色を変化させながら点滅する、無数の光の球体を配置。バレーボールくらいの大きさの球体の中で、それぞれの光はシャボン玉であったり、周囲の光に影響され呼応するように光ったり、とさまざまだ。 Photo:Kisa Toyoshima「Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」 それらが相互に呼吸するようなスピードで、点滅を繰り返す。球体そのものも、鏡面のように周囲の景色を映しており、光に包まれた無限の空間が広がっているような光景が見られる。 本作では、認知と存在について、人間が世界をどのように見ているのかを模索すると同時に、現象が、環境との連続的な関係性の中に存在することを示唆しているという。時間を忘れて光の球体に見入ってしまいそうな、没入感たっぷりの空間が広がっていた。 「Megalith Crystal Formation(work in progress)」の空間では、「花と人」と「Black Waves」という全く異なる2つの表情で、空間を一変。暗闇に深紅の花々がデジタルアートで表現された「花と人」は、大型のモニター付近にいる人々の動きに影響を受けながら、コンピュータープログラムによってリアルタイムで花々が描かれ続ける。永遠に変化し続け、今この瞬間の

日本人パリコレデザイナー「TOMO KOIZUMI」の初アート展が開幕

日本人パリコレデザイナー「TOMO KOIZUMI」の初アート展が開幕

鮮やかな花のようなラッフルドレスで知られる「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」のデザイナー小泉智貴。自身初のアート作品による個展が、天王洲の寺田アートコンプレックス内にある「ユキコミズタニ(YUKIKOMIZUTANI)」で、2023年12月9日からスタートした。 「TOMO KOIZUMI」のドレスは主にオートクチュールの一点もので、一目見たら忘れられない唯一無二のデザインが魅力。ミュージシャンのビョークやサム・スミスなど、名だたるアーティストらから絶大な支持を集め、芸術性の高さからすでにニューヨークの「メトロポリタン美術館」などにも収蔵されている。 Photo:Naomi展示風景 小泉は1988年、千葉県生まれ。幼少期にイギリス出身のファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノによる「クリスチャンディオール」のオートクチュールコレクションと出会い、14歳から独学で服作りを始める。 千葉大学教育学部に在学中の2011年に自身のブランドを立ち上げ、2019年、初めてのファッションショーをニューヨークで開催。2020年、若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的とした「LVMHプライズ(LVMH Prize for Young Fashion Designers)」優勝者の1人に選出され、2021年には毎日ファッション大賞を受賞。同年に開催された東京オリンピック開会式で、国歌斉唱の衣装を担当したことも記憶に新しい。 Photo: Naomi展示風景 本展は、今年9月行われた2024年春夏パリ ファッション ウイークでのプレゼンテーション「Dress as a painting, Painting as a dress」の作品群を再構築。モデルたちがまとっていた色とりどりのラッフルのドレスがホワイトキューブの空間に浮遊し、「ファッションとアートの境界線」というテーマのインスタレーション作品へと変貌させた。 Photo: Naomi左「Strawberry Shake」・右「恋」 小泉はコロナ禍で移動が制限された頃、日本へ帰国して改めて内省の時間を過ごす中でアート作品の制作を本格化させたという。本展ではブランドのアイコンとも言えるラッフルの白い生地が、色とりどりの油絵具やアクリルラッカースプレーでペイントされている。 壁に広げて掛けられた作品群は、大型の絵画のようでもあり、フリルの立体感と相まって鑑賞者により強い印象を残すだろう。また、「原風景」「Strawberry Shake」「夜の地面」など、詩的なタイトルを知った後に改めて眺めると、作品の見え方が変化する感覚があるかもしれない。 Photo: Naomi「印象の中の風景(green)」 使われている生地そのものも、これまでの「Tomo Koizumi」の多くのドレスに用いられてきたポリエステルオーガンジーだけではなく、絵画のキャンバスに使われるコットンもあり、より絵画に近しい新たな表現へのチャレンジがうかがえた。 Photo: Naomi「印象の中の風景(pink,red,gray)」 今後しばらくはコレクションの発表を行わず、アート作品の創作活動が中心になるという小泉は、個展の開催を前に、「アートとして扱えるファッションを作りたいと思い続けて、ここまでやってきた。境界を超えて、アートとファッションどちらの領域でも活動することができれば、2つの業界の橋渡しにもなれるのではないかと思っています」と語っている。 Photo: Naomi展示風景 会期中には、小泉本人

アート作品を見るとは?「さいたま国際芸術祭2023」がもたらす視点の変化

アート作品を見るとは?「さいたま国際芸術祭2023」がもたらす視点の変化

埼玉県さいたま市を舞台に、3年に一度行われている「さいたま国際芸術祭」。2016年にスタートして以来、市民や地域と国内外のアーティストが、また市民同士が文化芸術を介して交流を深め、「ともにつくる、参加する」市民参加型の芸術祭として続けられている。3回目となる今回、現代アートチームの目 [mé] がディレクターに起用され、早くから大きな話題を集めていた。 Photo:Naomiメイン会場の「旧市民会館おおみや」 目 [mé]は、アーティストの荒神明香(こうじん・はるか)、ディレクターの南川憲二(みなみがわ・けんじ)、インストーラーの増井宏文(ますい・ひろふみ)を中心に活動。2019年に「千葉市美術館」で開催された個展「非常にはっきりとわからない」が国内外で話題を集めるなど、観客を含めた状況と導線を重視し、「我々の捉える世界の『それ』が、『それそのもの』となることから解放する」作品を発表している。 いわゆる「芸術祭」や「アートの作品を鑑賞する」といった従来のイメージをくつがえし、新鮮な発見と貴重かつ興味深い体験ができる本展。閉幕まで残りわずかだが、現地を訪れ楽しんでもらいたく、詳細をレポートする。 市内を歩いて楽しむ芸術祭 メイン会場の「旧市民会館おおみや」は、JRさいたま新都心駅と大宮駅のほぼ中間地点に位置し、どちらの駅から歩いても15分ほどかかる。特に大宮駅は東北新幹線も停まるターミナル駅で、駅構内も広くて複雑だ。あまり土地勘のない鑑賞者や、訪問当日が悪天候の場合は、それだけで心理的なハードルになりかねないだろう。 Photo:NaomiJR「さいたま新都心」駅の構内 しかし目 [mé] は、市内を歩くところから芸術祭は始まっており、2つの駅のどちらからメイン会場へアクセスするかでその印象や体験が変わることも含め、あえて意図したという。ちなみに筆者は「大宮駅」から向かい、帰りはさいたま新都心駅を利用した。縁結びのパワースポットとして知られる大宮氷川神社の長い参道が、メイン会場のすぐ横を通っている。紅葉が美しく、非常に趣のある道だった。 Photo:Naomi大宮氷川神社の参道 すべてを見ることができない、変化し続ける芸術祭 旧市民会館おおみやは、1970(昭和45)年に完成し、2022年3月に閉館するまでの半世紀余り、多くの市民に親しまれた大ホールと小ホールのある劇場だった。本展ではこの建物全体を使って、美術家や研究者、編集者、演出家や盆栽師などさまざまなアーティストにより、写真や映像、音声、立体などの多様な作品の展示のほか、大ホールを活用した舞台公演、映画の上映などが連日展開されている。 Photo:Naomiメイン会場の受付周辺 時代を感じる古ぼけた看板や内装、家具などが点在する館内は、地下2階から地上3階と案外広い。決められたルートが存在せず、鑑賞者はフロアマップなどを頼りに、自由に歩きまわって楽しむしくみ。一部の作品をのぞいて、写真や動画の撮影もできる。手荷物を預けるロッカーがなく、階段を昇り降りしたり、狭く暗い通路を歩いたりする場所も少なくないため、歩きやすく身軽な格好で訪問するのがベターだ。 Photo:Naomi毎日写真が入れ替わる「ポートレイト・プロジェクト」 芸術祭の大きな特徴は、常に同じ作品や体験が用意されておらず、毎日変化し続けていること。いつ誰と訪れたのか、その日の天候や歩んだルート、ふとしたきっかけで目に止まった景色にいたるまで、その日、その時、その場所限りの体験に、自分だけの固有性が生まれることを

麻布台ヒルズギャラリー開館記念「オラファー・エリアソン展」をレポート

麻布台ヒルズギャラリー開館記念「オラファー・エリアソン展」をレポート

自然現象や、気候変動などの社会課題から着想を得て、インスタレーションや立体作品を手がける現代アーティスト、オラファー・エリアソンが、港区に開館する「麻布台ヒルズギャラリー」で、オープニング記念の個展を2023年11月24日(金)から開催する。 国内で開催されるエリアソンの個展は、2020年に清澄白河の「東京都現代美術館」で大きな話題を集めた展示以来。今回の企画は「森美術館」館長の片岡真実と、アソシエイトキュレーターの徳山拓一が担当した。  Photo:Kisa Toyoshimaオラファー・エリアソン展 エリアソンは1967年、コペンハーゲン生まれのアイスランド系デンマーク人。1990年代初頭から、写真や彫刻、ドローイング、インスタレーション、デザイン、建築など幅広くジャンルレスな表現活動を行い、手がけた作品はロンドンの「テート美術館」やニューヨークの「グッゲンハイム美術館」「金沢21世紀美術館」など、世界各国のミュージアムに所蔵されている。 Photo: Lars Borgesオラファー・エリアソン リサイクル素材に特化した新作を初めて発表 「街全体がミュージアム」をテーマに掲げる麻布台ヒルズ敷地内には、パブリックアートが点在。エリアソンの新作、かつ国内で発表された中でも最大規模のパブリックアート「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が、「森JPタワー」オフィスロビーで鑑賞できるが、それと同じモジュールを使った、世界初公開の新作「呼吸のための空気」が、ギャラリー内の展示室中央に鎮座していた。 Photo:Kisa Toyoshima森JPタワーにある、オラファー・エリアソン「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」(2023) Photo:Kisa Toyoshima展示風景 作品を構成するのは、「バイシメトリック・ヘンデカへドロン」と呼ばれる、ハンドメイドで成形した十一面体。エリアソンは、最新技術を用いて、廃棄物を焼却処分した際の煙に含まれた亜鉛を物質化させ、初めて作品の素材に用いたという。どこか有機的なかたちの作品が、実は大気として私たちの肺に入るはずだった金属からできている、という事実に思わずたじろいでしまうかもしれない。 Photo:Kisa Toyoshima16の吊り彫刻シリーズのひとつ「蛍の生物圏 (マグマの流星)」(2023) 本展に合わせて再構成したインスタレーションなど15点を展示 天井高5メートル、奥行20メートルを超える真っ暗な空間では、瞬間的に照らすストロボの光と水だけで構成されたインスタレーション「瞬間の家」(2010年)が、本展の空間に合わせて再構成されて展示。水と光というシンプルな要素ながら、無限に変化し続ける水の曲線と音、そこに内在する美しさにはっとさせられるだろう。 Photo:Kisa Toyoshima「瞬間の家」(2010) 本展の鑑賞にはチケットが必要。通常チケットのほか、振り子の原理を利用したドローイングマシン作品「終わりなき研究」(2005)を、実際に操作・体験し、完成したドローイング1枚を持ち帰ることのできる先着順の体験付きチケットや、カタログ付きチケットも数量限定で販売する。日時指定、事前予約制のため、公式ウェブサイトから確認してほしい。 Photo:Kisa Toyoshima「終わりなき研究」(2005) 作品を自宅で楽しめる限定グッズも登場 ギャラリーすぐ下のフロアには、オリジナルグッズを販売する「ザ ショップ(THE SHOP)」がオープン。 環境負荷の低減に