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子どもにも恵まれた主婦レイチェル(キャスリン・ハーン)は押しつぶされる欲望とセックスレスの結婚生活に悩みを抱えながら、心理カウンセリングに通っていた。この空回りした郊外居住者の主人公を再び覚醒させたのは、夫婦で揃って出かけた地元のストリップクラブで出会ったストリッパー、マッケナ(ジュノー・テンプル)だった。彼女は自由奔放なライフスタイルへと導く禅の指導者のように振る舞い、そこには共生する関係が生まれていく。マッケナを家に住まわせることにしたレイチェルは、彼女が娼婦として一見贅沢な生活を送る日々を垣間見ることとなる。
TVドラマシリーズ『シックス・フィート・アンダー』で脚本、製作を手がけたジル・ソロウェイの初監督作にあたる本作。主演のキャスリン・ハーンが見せる自虐的なユーモアが、白い柵に囲まれた家で暮らす、典型的で幸せな家庭に流れる哀歌に本質を与え、そこに影を落とすことで作品を高めている。キャスリンの日常の停滞を演じる演技によって、魅力のないアプリ開発者の夫(ジョシュ・ラドナー)と生活するということはパニック発作を招くという事実を受け入れることができるのだ。ジュノー・テンプルはそれほど幸運ではないかもしれない。この非常に痩せた女優は、人生の教訓となる駒から物事を別の面から見る具体的な感情までを表現するのに行き詰まっているからだ。ジル・ソロウェイ監督は、笑いだけではなく感情的な洞察を表現できるユーモアのある女優たちを発掘したが、キャスリン・ハーンが存在を際立たせている。彼女こそ、心から熟考を表現できる女優だ。
2015年11月7日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開