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デヴィッド・リンチ:アートライフ

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タイムアウトレビュー

4 5 つ星中

アメリカの鬼才、デヴィッド・リンチを親密に捉えたドキュメンタリー映画

現代の映画監督はたいていCMやミュージックビデオからキャリアをスタートさせる。デヴィッド・リンチは、シュールレアリズムの画家から出発しており、まさに初期の短編映画『アルファベット』と『グランドマザー』では、一部にアニメーションを使用していた。彼は自分の絵が動くところを見たかったのだ。本作は、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルムと、ジョン・グエンの3人が監督を務めた。グエンは、リンチを追った3部作のドキュメンタリー『LYNCH』(2004年)でプロデューサーを努めており、リンチとは長い付き合いだ。

リンチがハリウッドから打診を受ける以前に経験した人格形成期に迫り、リンチ自らが気楽に穏やかな話しぶりで、人生を語り尽くす。アイダホ州ボイジーで過ごした驚きの幼少期や、画家ブッシュネル・キーラーと出会い、初めてアトリエを借りたバージニア州アレクサンドリアでの物語などをだ。そこは彼が「アートライフ」のアイデアにとらわれるようになった場所。彼は、次々と傑作(けっさく)を生み出しながら、コーヒーを飲み、タバコを吸い、謎めいた美女たちと出会う人生を想像していた。実際には、23歳になる前に結婚し、荒廃したペンシルバニア州で暮らすことになったのだが。

劇中では、ハリウッドヒルズのアトリエで悠々自適に暮らすリンチが、幼い愛娘ルーラと絵を描き、巨大なキャンバスに絵の具などを塗りつけ、手で作業するという、画家と父の顔を少し見ることができる。古いホームビデオによる未公開映像も多く使用されているが、彼がアメリカの中産階級による屈折した副産物であり、「なぜかダークサイドに引き込まれた最高位のボーイスカウトの少年」というイメージで映し出されていた。

リンチが描いた何百もの絵画がスクリーンをよぎり、時にじっくりと細部まで映し出される。素晴らしい絵が多く、脳裏に焼き付いて離れない絵から、少々ずさんな絵までがあった。それらの絵から特異なアーティストの理解を深めることができた。本作とともに、ドキュメンタリー映画『イレイザーヘッド・ストーリーズ(原題)』を鑑賞すると、彼の前半生を描く絵が完成するだろう。次回は、映画『エレファント・マン』や『砂の惑星』の製作を迫ったドキュメンタリーを世に送り出してもらえないだろうか。
原文:TOM HUDDLESTON
翻訳:小山瑠美

2018年1月27日(土)公開

公式サイトはこちら
(C)Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
テキスト:
Tom Huddleston

リリースの詳細

  • Rated:15
  • 公開日:2017年6月14日水曜日
  • 上映時間:86 分

出演者と制作者

  • 監督:Olivia Neergaard-Holm, Rick Barnes, Jon Nguyen
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