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Articles (16)

文楽×アニメーションが生み出す新たな「曾根崎心中」

文楽×アニメーションが生み出す新たな「曾根崎心中」

タイムアウト東京 > カルチャー > 文楽×アニメーションが生み出す新たな「曾根崎心中」 国立劇場が文楽入門公演「BUNRAKU 1st SESSION」として新たな試みを行う。「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」など数々のジブリ作品で美術や背景を担当したことで知られるアニメーション作家、男鹿和雄に背景画を依頼し、その絵をもとに映像作家の山田晋平が映像を制作するというもの。舞台美術ではなく映像の中で文楽を上演することで、従来とは異なる美しさを実現するだけでなく、海外公演なども行いやすくなる。 BUNRAKU 1st SESSION | Trailer1 演目は、近松門左衛門が生んだ文楽屈指の名作、「曾根崎心中」より天神森の段。醤油屋の手代の徳兵衛と遊女のお初が森に入り、心中するという、物語のクライマックス部分だ。映像の山田と、今公演で初めてお初を「遣う」(つかう、文楽で人形を操作すること)人形遣いの吉田簑紫郎に話を聞いた。 テキスト:高橋彩子 関連記事『STAGE CROSS TALK 第4回(前編)』『STAGE CROSS TALK 第4回(後編)』

舞台を支える名裏方、徳永泰子にインタビュー

舞台を支える名裏方、徳永泰子にインタビュー

タイムアウト東京>カルチャー>舞台を支える名裏方、徳永泰子にインタビュー テキスト:高橋彩子 華やかな舞台を陰で支える舞台スタッフたち。その世界は長らく男性社会といわれ、中でも舞台監督は男性が多い仕事だったが、現在では女性の活躍も増えている。3月8日の「国際女性デー」に際して、舞台監督の下で経験を積み、近年は「ステージマネージャー」の肩書きで新たな仕事の在り方を追求しつつ舞台作りに携わっている徳永泰子に話を聞いた。 関連記事『能の道をどこまでも行く』『STAGE CROSS TALK 第2回(前編)』

インタビュー:尾上松也

インタビュー:尾上松也

タイムアウト東京>カルチャー>インタビュー:尾上松也 テキスト:高橋彩子 歌舞伎のみならずさまざまな舞台やテレビで活躍し、今、最も忙しい歌舞伎俳優の一人、尾上松也。30代最後の年である2024年の幕開きは、「新春浅草歌舞伎」に出演する。 1980年に「初春花形歌舞伎」として始まり、2003年に今の名称で、若手が大役に挑戦する場となってきた新春浅草歌舞伎。近年、そのリーダー的存在として公演を牽引してきた松也は、次が10回目にして最後の出演となる。節目の舞台を前に、2023年を振り返り、新春浅草歌舞伎への抱負を語ってもらった。  関連記事『若手俳優に聞く「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」の魅力』『尾上右近(歌舞伎俳優)×坂入健司郎(指揮者)』

オペレッタ演出に初挑戦、野村萬斎が描く喜歌劇「こうもり」の魅力

オペレッタ演出に初挑戦、野村萬斎が描く喜歌劇「こうもり」の魅力

タイムアウト東京 > アート&カルチャー > オペレッタ演出に初挑戦、野村萬斎が描く喜歌劇「こうもり」の魅力 テキスト:高橋彩子  狂言師であり、俳優、あるいは演劇の演出家としても活躍している野村萬斎が、オペレッタの演出に初挑戦。手がけるのは、銀行家のアイゼンシュタイン夫妻が互いに浮気をしたりだまし合ったりと荒唐無稽なドタバタ劇の末に「全てはシャンパンの泡のせい」と大団円を迎える、ヨハン・シュトラウスⅡ世の喜歌劇「こうもり」だ。 洒脱(しゃだつ)で流麗な音楽に彩られたウィーン発のドラマを、萬斎は日本の物語へと大胆にアレンジする。果たしてその内容や狙いとは? 関連記事『インタビュー:森山未來』『能の道をどこまでも行く』

STAGE CROSS TALK 第5回(前編)

STAGE CROSS TALK 第5回(前編)

タイムアウト東京>カルチャー> STAGE CROSS TALK 第5回(前編) テキスト:高橋彩子 舞踊・演劇ライターの高橋彩子が、共通点を感じる異ジャンルの表現者を引き合わせる「STAGE CROSS TALK」シリーズ。第5回は、歌舞伎俳優の尾上右近と、指揮者の坂入健司郎が登場。ともに伝統の世界に自らの意思で飛び込み、メキメキと頭角を表している30代だ。 右近は清元の太夫(唄い手)・栄寿太夫としても活動、坂入は最近までぴあ株式会社の社員と指揮活動を両立させており、「二足のわらじ」の経験者としても共通点を持つ。 前編では、それぞれのジャンルに魅入られたきっかけや、自ら選び取った一生の仕事への情熱を聞いた。 関連記事『尾上松也、尾上右近ら出演の新作歌舞伎「刀剣乱舞」が7月開幕』『能の道をどこまでも行く』

STAGE CROSS TALK 第5回(後編)

STAGE CROSS TALK 第5回(後編)

タイムアウト東京>カルチャー> STAGE CROSS TALK 第5回(後編) テキスト:高橋彩子 異ジャンルの表現者として、歌舞伎俳優の尾上右近と指揮者の坂入健司郎が対談する、「STAGE CROSS TALK」シリーズ第5回。前編ではそれぞれのジャンルへの情熱や二足のわらじの経験について語ってもらったが、後編では、20代の頃から続ける自身の活動や今後の予定について聞いた。 関連記事『STAGE CROSS TALK 第5回(前編)』『尾上松也、尾上右近ら出演の新作歌舞伎「刀剣乱舞」が7月開幕』

新たな文化を発信、お座敷ライブハウス「津の守」が四谷荒木町にオープン

新たな文化を発信、お座敷ライブハウス「津の守」が四谷荒木町にオープン

タイムアウト東京>カルチャー> 新たな文化を発信、お座敷ライブハウス「津の守」が四谷荒木町にオープン テキスト:高橋彩子 2023年4月22日、四谷荒木町に「お座敷文化」を伝えるライブスペース「津の守(つのかみ)」がオープンした。店主は、昨年まで「ふみ香」の名で活動する赤坂芸者でもあった塩見文枝だ。 その人脈を生かして、5月7日までの「津の守 お披露目公演」では赤坂芸者から長唄、常磐津(ときわづ)、清元、琵琶(びわ)、落語、狂言、文楽など、さまざまな演者たちが登場。本記事では、そのうちの地元商店街やパートナー企業向けのクローズドの会のレポートを紹介する。 関連記事『能の道をどこまでも行く』『STAGE CROSS TALK 第2回(前編)』

能の道をどこまでも行く

能の道をどこまでも行く

タイムアウト東京>カルチャー> 能の道をどこまでも行く テキスト:高橋彩子 700年近い歴史を刻み、ユネスコ世界無形文化遺産にも選ばれた、日本の伝統芸能、能。圧倒的に男性が多いその世界で、性差を感じさせない芸と存在感で光彩を放っている女性能楽師が、観世流シテ方の鵜澤久(うざわ・ひさ)だ。国際女性デーを迎える3月、そのインタビューを届ける。 関連記事 『女性が担う伝統芸能の世界』『STAGE CROSS TALK 第2回(前編)』

若手俳優に聞く「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」の魅力

若手俳優に聞く「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」の魅力

タイムアウト東京>カルチャー> 若手俳優に聞く「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」の魅力 テキスト:高橋彩子 日本のRPGの金字塔ともいうべき「ファイナルファンタジー」シリーズ。その中でも傑作の呼び声高い「ファイナルファンタジーX」が、360度に展開する舞台と円形の客席が特徴の「IHIステージアラウンド東京」で3月4日から新作歌舞伎になる。 架空のスポーツ「ブリッツボール」チームのエースである少年ティーダが、時空を超えてスピラの地に入り、出会った仲間とともにスピラの人々を苦しめる魔物シンに立ち向かっていくという物語は、青春群像劇のような雰囲気も感じられる。ヒロインのユウナを演じる中村米吉と、その幼馴染のワッカを演じる中村橋之助という、今回の出演者の中でも若い世代の2人に意気込みを聞いた。 関連記事『2023年春「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」が開幕』『木下グループpresents「新作歌舞伎ファイナルファンタジーX」』

インタビュー:森山開次×ひびのこづえ

インタビュー:森山開次×ひびのこづえ

タイムアウト東京> カルチャー> インタビュー:森山開次×ひびのこづえ テキスト:高橋彩子 誕生以来、老若男女に愛され続けるサン=テグジュペリの絵本「星の王子さま」。これまでにもミュージカルなどさまざまな舞台が作られているが、「KAAT神奈川芸術劇場」で2020年に初演された「星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙-」は、森山開次を演出・振付・出演に迎え、ダンスを中心とする新しい作品として話題になった作品だ。 この舞台を特徴づけていた要素の一つが、ひびのこづえの美しい衣装。長年タッグを組み、魅力的な舞台を送り出している森山とひびのの対談が実現した。 関連記事「インタビュー:森山未來」「フォトグラファーの枠に収まらない領域へ、レスリー・キーの挑戦」

インタビュー:森山未來

インタビュー:森山未來

タイムアウト東京> カルチャー> インタビュー:森山未來 テキスト:高橋彩子 ダンサー、俳優、あるいはボーダーレスな表現者として、多彩な活動を展開する森山未來。次なる舞台「FORMULA」では、脳科学者の中野信子、世界的ダンサーのエラ・ホチルドと共同で構成・演出・振付を行い、自らも出演する。 数学の世界では「公式」、料理の世界では「調理法」、心理学では「身体を動かすための手順」を意味するなどさまざまな意味を持つタイトルのもと、一体どのような作品が出来上がるのか? 創作の経緯や構想を聞いた。 関連記事「インタビュー:吉田羊×松本紀保」「STAGE CROSS TALK 第3回(前編)」

STAGE CROSS TALK 第4回(前編)

STAGE CROSS TALK 第4回(前編)

タイムアウト東京>カルチャー>STAGE CROSS TALK 第4回(前編) 舞踊・演劇ライターの高橋彩子が共通点を感じる異ジャンルの表現者を引き合わせる『STAGE CROSS TALK』シリーズ。 第4回は、文楽人形遣いで、2021年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された桐竹勘十郎と、舞踊家で、愛知県芸術劇場芸術監督の勅使川原三郎が登場。共に1953年生まれの同い年で、どんな動きをもこなす優れた演者であり、また、「人形」「絵画」といった共通点も持つ二人。前編では、それぞれの原体験を聞いた。 関連記事『インタビュー:佐東利穂子』『STAGE CROSS TALK 第3回(前編)』

News (4)

注目のアーティスト、ホー・ツーニェンの初期作から最新作までを紹介する個展が開催中

注目のアーティスト、ホー・ツーニェンの初期作から最新作までを紹介する個展が開催中

テキスト:高橋彩子 シンガポールを拠点に活躍するアーティスト、ホー・ツーニェン(Ho Tzu Nyen)の初期作品から最新作までを紹介する個展「ホー・ツーニェン エージェントのA」が2024年7月7日(日)まで、「東京都現代美術館」で開催されている。深い思索をユニークな視点で表現するホーの世界を堪能できる内容だ。 Photo: Keisuke Tanigawa 1976年生まれのホーは、映像やインスタレーションを通して、東南アジアの歴史や精神をさまざまな視点から考察してきた。近年は、「国際舞台芸術ミーティング in 横浜」にて2018年に「一頭あるいは数頭のトラ」、2020年に「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」(ワークインプログレス)、「あいちトリエンナーレ2019」で「旅館アポリア」、2021年に「山口情報芸術センター[YCAM]」にて「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」、2022年に「豊田市美術館」にて「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」と、毎年のように日本でその作品が披露され、大いに注目を集めている。 今回は、上記の「一頭あるいは数頭のトラ」「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」のほか、2003年のデビュー作「ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり」、2015年発表の「名のない人」および「名前」、2023年の「時間(タイム)のT」などの映像作品を展示。プレス内覧会で「私は動く思考のようなイメージで映像を作っています」とホーは語ったが、まさにその思考を存分に浴びることができる個展と言えるだろう。 Photo: Keisuke Tanigawa「ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり」 「ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり」は、恐らくは土地によくいるトラを見ながら存在しないライオンを見たと称しシンガポールの国名「シンガプーラ(サンスクリット語でライオンのいる町)」を命名したとされるパレンバン(現在のインドネシア・スマトラ島)の王子、サン・ニラ・ウタマ(Sang Nila Utama)を象徴的に扱いながら、王座を幾度も固辞しながら権力を強化していった共和政ローマ末期の政務官ジュリアス・シーザー、シンガポールを創設したイギリス人植民地行政官トーマス・スタンフォード・ラッフルズ(Thomas Stamford Raffles)など、さまざまな権力・権力者を考察する寓話(ぐうわ)的作品だ。 「一頭あるいは数頭のトラ」は、トラと人間の神話や伝説を皮切りに、イギリス政府からの委任でシンガポールに入植した測量士ジョージ・D・コールマン(George Drumgoole Coleman)とトラとの遭遇、マラヤ共産党のゲリラから「マレーの虎」と称された大日本帝国の山下奉文まで、「トラ」をキーワードにマレー半島の歴史を巡るさまざまな事象を3Dアニメーションで表した作品。 Photo: Keisuke Tanigawa「名前」 また、第二次世界大戦中、イギリス、日本、フランスの三重スパイとして活動したマラヤ共産党総書記のライ・テック(Lai Teck)を取り上げた「名のない人」は、マラヤ共産党とマラヤ危機について記した資料「マラヤの共産主義闘争」などのゴーストライターとされる謎の人物、ジーン・Z・ハンラハン(Gene Z. Hanrahan)を扱った「名前」と対を成しており、一つの空間を分かち合っている。ホーの言葉によれば、この2作は「歴史の不確定性についてのもの」。名前と情報を扱った2作がどちらも既存の映画などのコラージュとなっている点も示唆的だろ

尾上松也、尾上右近ら出演の新作歌舞伎「刀剣乱舞」が7月開幕

尾上松也、尾上右近ら出演の新作歌舞伎「刀剣乱舞」が7月開幕

戦士の姿に擬人化された日本の刀剣=「刀剣男士」たちが、「時間遡行軍」から歴史を守るため戦うゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」が2023年7月、新作歌舞伎になる。公演に先立って会見が開かれ、尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉が出席。果たしてどんな舞台が観られるのだろうか? 尾上松也演じる三日月宗近 刀剣乱舞 ONLINEは、史実を交えながら展開する虚実の物語や、剣士たちの美しいビジュアルが人気のゲームだ。2015年にはミュージカル、2016年にはストレートプレイ(演劇の一形態)、2016年と2017年にはアニメ、2019年には実写映画化……と、さまざまなジャンルに派生している人気コンテンツが、新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)」として、尾上菊之丞と尾上松也の演出で新たな姿を表す。 登場する刀剣男子は、松也演じる三日月宗近、尾上右近扮する小狐丸(足利義輝と2役)、中村鷹之資の同田貫正国(松永久直と2役)、中村莟玉の髭切(義輝妹紅梅姫と2役)、上村吉太朗の膝丸、河合雪之丞の小烏丸の6人。このほか、大谷龍生、中村歌女之丞、大谷桂三、中村梅玉らが、舞台を引き締める。 尾上右近演じる小狐丸 「『刀剣乱舞』は派生したメディアミックス全てが基本的にはオリジナルのストーリーなのも面白い」と松也が指摘する通り、今回の歌舞伎版でも独自の物語が展開。今回、時代背景として選ばれたのは、室町幕府13代将軍足利義輝が、三好義継、松永久通らに京都二条御所で襲撃され、殺害された「永禄の変」だ。 松也は、まず三日月宗近を中心に据える中、義輝がその最初の持ち主だった可能性があることから、永禄の変に注目したという。足利義輝は剣術の達人で、名刀を多く所持する中に宗近があったといわれる。 「義輝と宗近のクライマックスから着想をふくらませ、歌舞伎に関わりのある刀剣を、ということで、髭切、膝丸、小狐丸といったキャラクターが決まっていきました。そんな中、男らしいキャラクターが欲しくて、(ほかのキャラクターとは少し時代が違う)同田貫正国の起用という、トリッキーなサプライスも生まれました」(松也) 尾上松也(Photo: Keisuke Tanigawa) あらすじは以下の通り。 次期将軍である足利菊幢丸と妹の紅梅姫の命を奪おうと、時間遡行軍が襲い掛かるが、三日月宗近ら刀剣男士がこれを阻止する。やがて松永弾正の助力もあって菊幢丸は元服し、足利義輝を名乗って将軍となるが、魔物に取り憑かれてしまう。弾正の嫡男の松永久直はそんな義輝を諫めるが⋯⋯。 名匠・三条宗近が稲荷明神に祈り、現れた狐と共に名剣・小狐丸を打つ「小鍛冶」など、刀剣乱舞に登場する逸話が数多く存在する歌舞伎はもともと、刀剣乱舞の世界とは親和性が高い。一体どのような歌舞伎作品が出来上がるのだろうか? 「ありそうで見たことのなかった『古典歌舞伎』というのが、僕のイメージ。皆さんが想像するような王道の歌舞伎のテイストをふんだんに盛り込みたいと考えています。音楽は邦楽器しか使わず義太夫などを入れるほか、附(つ)け打ちが入ったり立ち回りがあったりと、『ザ・歌舞伎』なニュアンスを込め、生の舞台の良さを表現したいですね」と松也は意気込む。 尾上右近(Photo: Keisuke Tanigawa) その松也を、年の近い共演者としてサポートする右近も「ほかの舞台でご一緒した刀剣男士の先輩たちも、今回の歌舞伎化を喜んでくれています。『歌舞伎を念頭に置きながら自分たちもやってきたところがある』『それを歌舞伎役者

2023年春、新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」が開幕

2023年春、新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」が開幕

歌舞伎俳優、尾上菊之助の発案で生まれる新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」は、名作ゲームの歌舞伎化という初めての試みだ。2023年3月の公演に先駆けて、2022年11月29日に製作発表会見が行われた。 Photo: Keisuke Tanigawa ゲーム「ファイナルファンタジーX」の世界が歌舞伎に 脚本は連続テレビ小説「おちょやん」や「家政夫のミタゾノ」などのドラマを手がけた八津弘幸。企画・演出・出演(主人公ティーダ)を歌舞伎俳優の尾上菊之助が務め、共同演出に「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」や B'zのドームツアーなどを担当した金谷かほり。菊之助は、新型コロナウイルスによる2020年のステイホーム期間に企画を構想したという。 尾上菊之助(Photo: 阿部章仁) ティーダ役:尾上菊之助 「2020年3月、歌舞伎公演がなくなり先行きが見えない中、久々に家族でゲームをしようとした時、心に残った作品をやりたいと考えて思い出したのが、2001年発売のファイナルファンタジーXでした。登場人物がフルボイスで、ゲームではなく映画を見ているような感覚があって。それ以前のゲームは自分が主人公の視点でプレイしていましたが、キャラクターに感情移入してキャラクターの目線でゲームをして、非常に感動したことを覚えています。 バラバラだった登場人物たちの心が物語が進む中で通い合い、一人が皆のため、皆が一人のため、互いを思い合いながらシンという強大な敵に向き合う姿は、コロナ禍であり、戦争も起きている悲しい状況の今、強いメッセージとして届けられるのではないかと考え企画いたしました。私自身がこの作品に救われたように、少しでも皆さまに元気を届けられたらと思います」 その菊之助からの熱いオファーを受けた歌舞伎俳優達が、出演を決めた。 中村獅童(Photo: 阿部章仁) アーロン役:中村獅童 「菊之助さんから電話でオファーを受けた時は、菊之助さんと共演させていただくこと自体、約10年ぶりくらいだったのでびっくりしました。私自身も家にこもって、これからの自分や歌舞伎界のことを考えていた時でしたから、菊之助さんの熱い気持ちと考えていることに対してうれしかったですね。 衣装合わせでも、お互いに意見を出し合いながら作らせていただいたので、袖を通した時はテンションが上がりました。何より新しい舞台を菊之助さんと作れるのがうれしい。菊之助さんの気持ちに応えられるよう一生懸命務めさせていただきます」 尾上松也(Photo: 阿部章仁) シーモア役:尾上松也 「菊之助のお兄様からお話を聞いたときは非常に驚きましたし、同時にコロナ禍でも常に前に進もうとするお気持ちに感動しました。しかも大先輩であるお兄様から直々にお電話をいただいて光栄でしたし、微力ながら少しでもお力になれれば、と。お兄様の演出のもと、見たことのない歌舞伎体験をお届けしたいと思います。僕はこのゲームは5周くらいしていますが、今回、初めてルールばかり見てプレイしてみたら、新たな発見があって面白かったです。 また、衣装に袖を通してみて舞台へのボルテージが上がり、実際にどうなるか楽しみになりました」 坂東彦三郎(Photo: 阿部章仁) キマリ役:坂東彦三郎 「菊之助さんとは、育った環境、教わった教室、教科書……とずっと一緒で。新作歌舞伎や外部出演に誘ってくださったり、新春の国立劇場の歌舞伎では埋もれていた作品を復活させたりと、歌舞伎を再構築する姿は見てきたので、オファーをいただいた時は嬉しくて、二つ返

「アンディ・ウォーホル・キョウト」が見逃せない5つの理由

「アンディ・ウォーホル・キョウト」が見逃せない5つの理由

「アンディ・ウォーホル・キョウト」展が「京都市京セラ美術館」で2023年2月12日まで開催されている。アメリカ・ピッツバーグの「アンディ・ウォーホル美術館」の所蔵作品のみで構成される大回顧展で、絵画や彫刻など約200点、映像15作品を展示。その見どころを紹介しよう。 Photo:アンディ・ウォーホル・キョウト 1. 注目のイラストレーター時代 1949年にカーネギー工科大学(現カーネギー・メロン大学)を卒業し、ニューヨークへ向かったウォーホルは、ほどなく商業イラストレーターとして活動し始める。1950〜1960年代の彼の作品は、後の活躍の萌芽(ほうが)を見せつつ、猫や妖精、キューピッドなども頻出し、愛らしくみずみずしいのが特長。 そのうちの1作、スタンプドローイング「I Love You So」は、赤いハートにウォーホルの母・ジュリアのレタリングを添えた、シンプルながら観る者の心をとらえる作品だ。 2. 日本とのつながりを知る 1956年、ウォーホルとテレビ業界で働く彼の友人チャールズ・リザンビーは、世界一周旅行の一環として日本を訪れている。ウォーホルはリザンビーに恋心を抱いていたものの2人は恋人同士にはならなかったというが、旅は充実したものになった。 Photo:アンディ・ウォーホル・キョウト 本展では、ウォーホルの旅程表、ホテルのパンフレット、絵はがき、小冊子、電報頼信紙、税関告知書など、さまざまな旅の証拠や記念品を展示。さらに、彼が描いた日本ーー京都の景色や、葛飾北斎に倣った波の絵、ジェームズ・ディーン「理由なき反抗」の日本語ポスターの模写などを観ることができる。 3. 「三つのマリリン」が初公開 知られざるウォーホルを見た後は、誰もが知る彼の名作を味わおう。出迎えてくれるのは、有名なキャンベル・スープやブリロの箱のほか、ビートルズ、マリリン・モンロー、毛沢東、エルヴィス・プレスリー、ジャックリーン・ケネディ・オナシス、坂本龍一らが並ぶポートレートシリーズなど。 Photo: Ayako Takahashi 「三つのマリリン」は門外不出で、今回が日本初公開。肖像画だけでなく、絵のためのポラロイド写真やビデオ作品も並ぶ。 また、奇抜さを極めていったウォーホルのファッションも紹介され、アーティストとしてカリスマ的な人気を得たウォーホルの姿をさまざまな形で知ることができる。 Photo:アンディ・ウォーホル・キョウト 4. 死の影と戯れる 1987年に58歳でこの世を去ったウォーホル。その作品にはしばしば死のイメージも描かれた。「頭蓋骨のある自画像」は直接的にそのテーマを扱っている。ツナ缶を食べて女性が中毒死したことに着想した「ツナ缶の惨事」など、新聞雑誌の自殺や事故死などの記事に基づいて作成された「死と惨事」シリーズもその一つ。死刑執行に用いる電気椅子の写真をもとにした「電気椅子」シリーズも同様だろう。 Photo:アンディ・ウォーホル・キョウト こう書くと何やら暗い印象を与えるかもしれないが、1984年に始まった「最後の晩餐」シリーズは、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会横にある修道院の食堂を飾るダヴィンチのフレスコ画をもとにしたもので、図柄を大胆に解体し、自由にイマジネーション豊かに展開させている。キリストの死の直前を描いた同シリーズのうち22作が、ウォーホルの死の一カ月前、修道院のすぐ近くの展示場に飾られたという。 Photo:アンディ・ウォーホル・キョウト 5. グッズで追体験する